60歳で難病の診断を受けた筆者が闘病生活を赤裸々につづる連載。第6回以降は、頭に穴をあけるDBS(脳深部刺激療法)手術とその効果について前・中・後編に分けてお届けしている。今回は中編。手術中の紆余(うよ)曲折を写真とともにリポートする。(ジャーナリスト原英次郎)
>>前編「頭蓋骨に穴を開け電極を脳の深部へ…「男66歳、人生最後のトライ」の大手術を決心した理由」を読む
コロナに翻弄されて手術が2度の延期
DBS(脳深部刺激療法)手術前に必要な全ての検査を終え、医師との面接も済み、入院が2022年8月8日、手術は8月12日と決まった。コロナが依然として猛威を振るっていたので、病棟は完全隔離の完全看護だった。日記代わりに友人たちに送っていたメールの締めは、「看護師さんと仲良くしなくちゃね。男66歳、人生最後のトライです」と、軽口をたたいている。
ところが、だ。いよいよと気分を高めていたら、順天堂医院でコロナのクラスターが発生してしまい、手術は丸1カ月、9月16日に延期となってしまった。
この大病院には通常でもたくさんの患者が押し寄せている。紹介状がない場合は、診療費とは別に8250円もの高い選定療養費を徴収しているにもかかわらずだ。順天堂の人気があるのか、日本人が相変わらず大病院が好きなのか、理由は分からない。いずれにしても、どれだけ病院関係者が尽力して予防していても、いつかはクラスターが発生するのではないかと思っていた。その予感が的中した。
それから1カ月後――俺は、「PCR検査を受け、陰性なら来週月曜日に入院、9月16日金曜日に手術、1週間おいて23日から電流の調整に入ります」と、友人らに旅立ちのメールを送っていた。しかし、その直後――(以下、日付の入った文章は、当時の友人向けLINEやメールに加筆したもの)。
「なななんと、出発直前に携帯が鳴りました。執刀医の相棒のI先生から、U先生が急に発熱したので手術を延期してほしいというのです」「いやはや毎度、入院だ、手術だ、と大騒ぎして、これではまるで私は狼少年です。お恥ずかしい。次回は入院してから連絡します」で、さすがに一言。「なんとなく気落ちした気分です」(9月14日)
その後、執刀医のU先生から電話があり、「9月27日入院、30日手術」と連絡を受けた。いよいよ3度目の正直、少し待ちくたびれた感じがした。