原英次郎Photo:Ezra Bailey/gettyimages

『会社四季報』『週刊東洋経済』編集長、そして『ダイヤモンド・オンライン』編集長を歴任した著者が、60歳からパーキンソン病と共に生きるようになった日々を赤裸々に告白する。連載第1回は、発症と初診を振り返る。(ジャーナリスト 原 英次郎)

俺は今やアンドロイドだ

 俺は、2016年11月に「パーキンソン病」と診断されました。パーキンソン病は脳の神経伝達物質が減少する病で、静止時の震えや筋肉のこわばりなどの運動障害が起きる(詳細は記事末へ)。

 パーキンソン病と聞くと、少し知識のある人は、「だんだん体の自由が利かなくなり、最後は寝たきりに。もう、人生終わりだろう」と、思うかもしれない。

 ところがどっこい、患者から見れば、ゆっくりとはいえ確実に医学は進歩していて、パーキンソン病はもう「失意の病」ではない。そのことを古巣、ダイヤモンド・オンラインに連載の形を借りて、伝えていきたい。

 もちろん、治療の結果、何か得ると何かを失うことも往々にして起こる。俺の場合は、診断から6年を経て、DBS(Deep Brain Stimulation)という治療法を決断し、22年9月に手術を受けた。頭に穴を開けて、細い針金状の電極を脳の中心部に刺す手術だ。

 その電極からは微弱な電気が流れている。だから今、俺はまるで“アンドロイド”だ。でも、1日の多くを寝たきりだった状態から抜け出せたし、筋肉のこわばりが改善し、動きもずっとスムーズになった。薬の量も3分の2程度に減らせた。

 とはいえ、もちろん、病気が完治するわけではない。術後、いいことずくめともいかないものだ。新たに、転倒や腰痛(の激化)、失禁の症状が出るようになった。今はこの治療のデメリットを最小限にしようと悪戦苦闘中である。

 しかし、手術の直前、妻が俺を撮影した動画を見返すと、DBSの効果を実感する。だから、手術を受けなければよかったとは全く思わない。

 何より、こうしてパソコンに向かって原稿が書ける。周りの協力があれば、仕事ができるようになったのは大きな喜びだ。ちなみに先日、飛行機に乗って田舎に帰省することもできた。