窮地に追い込まれたとき師匠から言われたこと

 師匠からは「他人に仕事を任せられるようになったら一人前だと知りなさい」と言われました。ハッとしました。

 当時の私は、仕事ができる喜びももちろんありましたが、どこかまわりを信用しきれていないところもありました。この仕事は自分にしかできないと思い込んで、全てを一人で完結させようとしていたのです。

 その後、師匠はこう続けました。「それは僕も同じで、君みたいに漫才作りを手伝ってくれる人がいるから仕事ができています。まわりの人は敵じゃなくて味方だということです」

 つまり、私に足りなかったのはまわりの人の力を借りることだったのです。たしかに、師匠は私よりも圧倒的に忙しいはずなのに、仕事の遅延もなく、質の高いものをいつも提供していました。その秘訣は、「人に任せること」だったのです。

 それ以降、私の働き方は大きく変わりました。今では、売れ始めた芸人から同様の相談を受けたときは、「仕事を任せること」「人の力を借りること」としつこく言っています。

 一人のキャパシティには限界がありますから、皆さんももし、余裕がなくなってきたら人の力を借りることからはじめてみてください。