高所得者は保険料を支払った割に年金が少なく、低所得者は見合わないほど多くの年金額を得られるワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

今の日本社会では、高齢の資産家がわずかな社会保険料で済む一方、現役世代は重い負担を背負っているようにも見える。これは制度の欠陥なのか、それとも何らかの合理的な設計思想があるのだろうか。※本稿は、学習院大学教授の鈴木 亘『入門 社会保障の経済学』(新世社)の一部を抜粋・編集したものです。

教育や外交、防衛、警察、消防も
市場の失敗を是正する資源配分

 経済学の観点から見ると、政府が行うほとんどの政策は、本来、資源配分の効率化政策か、所得再分配政策のどちらかに分類することができます(注1)。

 一見、経済と無関係に見える教育や外交、防衛、警察、消防といった施策でさえも、実は公共財や外部性など、市場の失敗を是正するために行われる資源配分の効率化政策と見ることができます。社会保障についても、もちろん例外ではありません。

 社会保障の5つの制度も、資源配分の効率化政策と所得再分配政策のどちらかに分けることができます。図表1-1を、見てみましょう。

図表1-1:社会保障制度の分類同書より転載 拡大画像表示

(注1)もちろん、現実には、結果的にどちらにもなっていないとか、どちらにもなっているという政策もあります。しかし、本来のあるべき姿としては、資源配分の効率化政策か、所得再分配政策のどちらかに分類されるべきと言えます。

 一番右にある欄が、社会保障制度の経済学上の分類を示しています。社会保険と公衆衛生、少子化対策は、資源配分の効率化政策と見ることができます。

 まず、公衆衛生については、伝染病予防やたばこ対策、食品衛生などは外部性、下水道は公共財に当たりますから、市場の失敗の是正策ということで、資源配分の効率化政策であることは明らかです。