近年、「頭の回転の速さの象徴」としてお笑い芸人が多くの場面で活躍をしている。そんなあらゆるジャンルで活躍をし続けるお笑い芸人たちをこれまで30年間指導し、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも話題になった伝説のお笑い講師・本多正識氏による1秒で答えをつくる力 お笑い芸人が学ぶ「切り返し」のプロになる48の技術』が発刊された。ナインティナインや中川家、キングコング、かまいたちなど今をときめく芸人たちがその門を叩いてきた「NSC(吉本総合芸能学院)」で本多氏が教えてきた内容をビジネスパーソン向けにアレンジした『1秒で答えをつくる力 お笑い芸人が学ぶ「切り返し」のプロになる48の技術』より、本文の一部をもとに仕事に関する本多氏の考え方をお届けする。

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「本当に仕事が速い人」と「仕事が速そうで遅い人」の差

 仕事が速い人もいれば、遅い人もいます。皆さんはどちらのタイプでしょうか。ちなみに私は40年以上仕事をしてきて、多少は仕事のスピードが上がったように思いますが、今でもそこまで自信があるわけではありません。

 今回は私の経験も交えながら、仕事が速い人と遅い人は何が違うのか話ができればと思います。

 かつての私には、仕事の速い遅いを決めるうえで重要な欠点がありました。それは気分によって仕事のスピードが変わってしまうということです。

 たとえば、調子の良い日はどんなことでも仕事を素早く、そして正確にこなすことができるものの、調子が悪い日はまったく仕事に手がつかないということも多かったのです。少し見ていきましょう。

 当時、何本も漫才台本の仕事や番組台本の仕事を抱えていたとき、体調を壊して締切を遅れてしまうことがありました。今思えば、やってしまったことは仕方がないと思えるのですが、当時の私はそう思えず、失敗をいつまでも引きずってしまっていたのです。

 そうすると1回の失敗をきっかけに負の連鎖に入ってしまいます。「あぁやってしまった...」と思っているあいだに次の締切が迫ってきて、それでもなかなか次の仕事に集中できないのです。スピードは出ないどころか、仕事の質にも影響が出てしまいました。

 こうして、どんどん悪循環に入り、気がつけば仕事が遅れるのが常態化してしまったのです。「また遅れてしまった...自分はなぜこんなこともできないのだろう...」と悩む日々でした。

 そんな私を見かねてある日、師匠が声をかけてくれました。