サラリーマンでありながら海外の映画祭でグランプリを受賞した長久允氏。その思考法と脚本術を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』が発売となりました。佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさんも大絶賛する同書について、長久氏へのインタビューも交えて深堀りします。(聞き手・文/飯室佐世子)
黒歴史が自己肯定感を削る
「あの時、ああしていればよかった」「思い出すだけで恥ずかしくて消えたくなる」。
長く生きていれば、親にも友人にも絶対に言えない黒歴史や、思い出すだけで胸が苦しくなる挫折が1つや2つはあるだろう。
多くの人は、そうした過去を「なかったこと」にして、社会性という服を着込み、前を向こうとする。
しかし、臭いものに蓋をしただけでは、根本的な解決にはならない。ふとした瞬間に過去の自分が顔を出し、現在の自分の自己肯定感を削り取っていくからだ。
一方で、そうした過去の挫折や恥ずかしい思い出を、自分の「最強の武器」に変えてしまう人たちがいる。彼らは何をしているのか。
その鍵は、「自分の人生をエンタメ化(メタ認知)できているか」にある。
つらい過去を「物語」に変換する方法
長久氏は、クリエイターとして最もチート(反則級)な裏技は「絶対誰にも言いたくない思い出をクリエイティブのネタにする」ことだと語る。
人に言えない恥や挫折は、あなたにとって紛れもない真実であり、強烈なエネルギーを秘めているからだ。
しかし、ただ過去を思い出して悲しむだけでは意味がない。重要なのは、その過去を「自分とは別の人間が主人公の物語」として書き記してみることだという。
過去感じた大きな感情を、言葉に吐き出していく。
あの頃つらかった自分を、上方からもうひとりの自分が観察して書き記していく。
そうやってある種のエンタメ化していくわけです。つらさは可笑しみに。惨めさは滑稽さに。や、そこまで変換されなかったとしても、主観的な思い出から一歩抜け出すことができるでしょう。
――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』P.231より
過去の出来事を主観で振り返るのではなく、映画のワンシーンのように上方から客観視してみる。
「なんでこの主人公、こんなバカな選択をしてるんだろう」「ここはもっと落ち込んだ方が面白いな」と、あえて監督のような視点で自分の過去を編集してみるのだ。
日記のようにただ感情を書き連ねるのではなく、「脚本」というフィクションの形に落とし込むことで、主観的な思い出から一歩抜け出すことができる。
物語は欠点を肯定するための装置
この「自分をエンタメ化する」という作業は、究極のメンタルケアになる。
長久氏は取材の中で、物語を書くことの効能についてこう語ってくれた。
長久允:キャラクター設定をするときに、良くない癖や欠点も書いていくじゃないですか。
基本的には、自分と類似性のある欠点を肯定していく物語になっていったりするから、自己肯定感にも繋がると思うんですよね。
ハリウッド映画を見てもわかる通り、完璧な主人公など存在しない。弱さや欠点、恥ずかしい過去を抱えた人間が、もがきながら進んでいくからこそ、物語は人の心を打つ。
あなたの人生も同じだ。
人生をつまらない消化試合にしないために。隠し続けてきた過去の黒歴史を、一度「物語」として客観視してみてはどうだろうか。
その時、あなたの最大のコンプレックスは、誰にも真似できない、魅力的な個性へと変わっているはずだ。
(本稿は、『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』の発売を記念したオリジナル記事です)
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佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさん大絶賛!
それっぽいもの」ではなく、
「本当に心を動かすもの」を
表現がいまいちしっくりこない。
この仕事、自分がやらなくてもいいような気がする。
もっとおもしろいものを作りたい。
そんな悩みに、現役サラリーマンでありながら、海外の映画賞で「日本人初」の快挙を総ナメしてきた著者が答えます。
どうしたら、自分だけの表現をし、それを成果に結びつけられるのか。
どんな人でも、「あなたにしか作れない作品」を生み出せるようになる、まったく新しい脚本術が誕生しました!

これからの「世界のスタンダード」を伝える
いま世界で本当に評価されるものは、「何かに似ているもの」ではありません。
ハリウッドで必ず聞かれること。それは、
“What’s your VOICE?”
あなたのボイスは何ですか?
ということです。
つまり、他の誰でもない「あなたが」何を伝えたいか、ということ。
では具体的にどうすればいいのか。
すべてを自分で切り開いてきた著者が、包み隠さず伝えます。
真剣に表現したいと思う人、自分らしさを失わずに働きたいと思う人に、とても響く内容です。
本書の内容
はじめに
「この本の結論を先に言います。」
「それっぽいもの」は最低だぜ!
王道の脚本方式と完全自己流の脚本方式をミックスして
そもそも脚本家ってどうやってなったらいいかわからない問題
Lesson0 世界一になるまでの変則ルート
「私が映画を作ったのは32歳から! おせ~!」
一度は夢をあきらめて、就職! (挫折期)
CMプランナーから、店頭ビデオプランナーに (朦朧期)
倒れて気づく。「クライアントは自分」
そして世界一。日本人初の快挙を、まさか私が。
「そもそも映画ってなんなの?」
Lesson1 何を書く?
「脚本ってなんですか?」
設計図としての書式
Step0 私は何を書くべきなのかを見つける
Lesson2 王道! ハリウッド式脚本法
「で、どうやって書くの?」
Step1 「ログライン」を書く
Step2 登場人物を作り込む
Step3 3幕構成にする
Step4 シーンを作る シーンカード入れ替え検証
Step5 セリフとト書きを書く
Interval あなたが天才かどうかという重要な話。
Lesson3 誰でもできる長久式脚本法
「めっちゃ変な書き方。それでいい。」
Step1 はじめに「怒り」と「悲しみ」がある
Step2 音楽を見つける
Step3 エンドロールの歌詞を書く
Step4 映画のタイトルを決める
Step5 ポエトリーリーディング脚本法
Step6 そのセリフをシーンや人物に振り分ける
Step7 音だけの2時間映画を作る
Step8 直し続ける
Lesson4 迷ったとき役立つかもしれない裏技集
「何も浮かばないよ!」
裏技1 絶対に誰にも言いたくない思い出を書く。
裏技2 SNSには書けない「よくない感情」という金脈
裏技3 会話のセリフがうまく書けないなら
裏技4 設定がうまく伝わってないと感じたら
裏技5 タイトルから考えちゃうっていうのはどう?
裏技6 「ポエトリーリーディング脚本法」に欠かせない号泣プレイリスト
裏技7 「うまい」は敵!
裏技8 極論! 10年書かないでみる
裏技9 おもしろくなくてもいいじゃないか(本気で言っている)
Lesson5 書いたあとどうする?
「映像化しちゃう?」
お金集めをどうするか(自腹、賞金、クラファンそれぞれのやり方)
予算別! 映画の作り方(10万円、100万円、1000万円)
実写映画撮影現場での時間削減工夫集(事前準備と心持ち)
ロケ場所についての具体的解決案
Lesson6 あなたにしか作れないものがある
「情緒不安定なあなたは向いている」
「当事者しか知らない感情がある」
「だから、本当のことしか書かない」……