マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は「昔から活字中毒だった」という。そんな及川氏が新社会人に薦めたい3冊の本を紹介。自身の最近の読書スタイルについても語る。
亡き父に代わって
母が薦めてくれた本
新社会人の皆さん、就職おめでとうございます。今回はこれから社会に出る方や出たばかりという方にお薦めしたい本と、私の本との向き合い方について紹介したいと思います。
私は昔から活字中毒でした。小学校の頃は図書館でよく本を借りていましたし、中学校からは長距離通学だったので、気になった文庫本をかばんに入れるようにしていました。スマートフォンもインターネットもない時代で、雑誌や新聞を買うことも多かったですし、手持ちに読むものがないときには、こっそり前の人が読んでいる新聞を読むこともありました。いまだに電車に乗ると、中づり広告を目を皿のようにして読んでいることがあります。
私は20歳の時に父を亡くしています。その後、就職するときに母が1冊の本をくれました。それが『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』(著:キングスレイ・ウォード、訳:城山三郎、新潮社)です。きっと母は「社会に出る息子に、父ならどんな本を薦めただろうか」と考えて、この本をくれたのだと思います。ところがもったいないことに、もらった当時、実はあまり私の心には響かず、30歳ぐらいになって再読してようやく、少しこの本の価値が分かるようになった気がします。
この本はもう手元になく、内容もあまりはっきりと覚えていないので、今回お薦めすることはできません。ただ、今でも「父なら就職するときに、どんな本を薦めてくれたのだろう」と考えることがあります。