イランは先週末、自国の領土内からイスラエルに対し、弾道ミサイルや無人機、巡航ミサイルによる攻撃を行った。この攻撃はあからさまな、これまでに行われたどの攻撃をもはるかに上回る規模のものだった。今回の攻撃は無差別的で、死傷者を出す狙いがあった。イランによる遅れた抗議行動ではあったが、これは「最大限の努力」だった。米国や英国、中東諸国の支援を受けたイスラエルの対応はおおむね成功した。イランは、イスラエルの存続に反対する軍事作戦を進めるためには何でもする用意があることを示した。これには歴史的経緯がある。2019年9月14日、イラン西部の基地から発射された無人機が、サウジアラビアのアブカイクとクライスにある、国営石油会社サウジアラムコが運営する製油所を攻撃した。世界の石油生産に与えた損害は甚大だった。イランが責任を認めず、また彼らが使用した無人機によって国家対国家の攻撃という現実を回避しやすくなった。2020年1月8日にもイラン西部の基地から発射された弾道ミサイルが、イラクのアサド空軍基地を攻撃した。これは同年1月3日の米軍による攻撃で、イラン革命防衛隊精鋭組織のガセム・ソレイマニ司令官がバグダッドで殺害されたことへの報復だった。同基地にいた米軍部隊には死者が1人もおらず、多数の負傷者を出す事態も回避された。これはひとえに地上の指揮官らが攻撃を予期し、それに基づいて部隊の配置を変更していたからだ。イランはこの攻撃を行ったことを認めた。いずれの攻撃も、国家対国家の攻撃の領域に入るという、後戻りできないところまで来てしまい、大きなエスカレーションを意味するように思われた。
【寄稿】イランの攻撃で見えた弱み
次はイスラエルが対応する番だが、抑止力回復には慎重さ必要
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