コロナ禍による在宅勤務や生活スタイルの変化などにより、若い人たちの間でつみたてNISA口座を開設する動きが急増。2024年からは新NISAがスタートした。新NISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)の内容から一部を抜粋・公開してきた本連載。その特別編として、なかのアセットマネジメント 代表取締役社長の中野晴啓さんに「投資に関する素朴な疑問や、新NISAを使って具体的にどうお金を増やしていったらいいのか」について、Q&A方式で答えていただいた。新NISAを使って投資や資産形成を始めてみたいという人に向けて、そのポイントをわかりやすく紹介していく。(構成:鈴木雅光、撮影:石郷友仁)

【投資のギモンQ&A】新NISAの1800万円の非課税保有限度額は、早めに埋めたほうがいいでしょうか。それとも時間をかけて埋めたほうがいいですか?Photo: Adobe Stock

――新NISAの1800万円の非課税保有限度額は、早めに埋めたほうがいいでしょうか。それとも時間をかけて埋めたほうがいいですか?

【投資のギモンQ&A】新NISAの1800万円の非課税保有限度額は、早めに埋めたほうがいいでしょうか。それとも時間をかけて埋めたほうがいいですか?中野晴啓氏:なかのアセットマネジメント 代表取締役社長

中野晴啓 まだ若い方は、あわてて1800万円の枠を埋める必要はないでしょう。新NISAで大事なのは、とにかく毎月1万円からでもいいので積立投資を始めることです。

 今、30歳の人なら、おそらく定年は65歳とか70歳くらいまで延長されていると思いますが、とりあえず65歳までに1800万円の枠を満たすつもりで積立投資を続けていけばいいでしょう。

 積立投資をするうえで大事なのは、とにかく続けることです。人間は弱い生き物なので、ちょっと油断をすると、辛い事から目を背けようとしてしまいます。

 積立投資は、毎月いくらかのお金を消費に回さず、使いたい気持ちをぐっとガマンして、自分の将来のためにお金を積み上げていく行為です。

 あまりにも無理のある金額を毎月積み立てて行こうとすると、確かに続けられれば未来は安泰ですが、大抵は途中で挫折します。

一度、積立投資を中断してしまうと、
再開することができずに終わる人が多い

 そして、これが不思議なもので一旦、積立投資を中断してしまうと、再開することができずに終わる、という人が結構多いのです。過去、私自身もそういう人を大勢見てきました。だからこそ、無理のない金額で始めることが、大事なのです。

 ただし、「無理のない」という言葉に、あまり甘えてはいけないのも事実です。最近は、3000円程度の少額資金でも積立投資ができるようになりました。しかし、毎月3000円を積み立てたとしても、元本ベースで1800万円を満たすためには500年もの時間を要します。これではちょっと時間がかかりすぎですよね。

 ということで、無理のない範囲でとは申し上げましたが、その範囲でも自分でできる最大限の努力はしていただきたいと思います。

30歳の人が65歳までに1800万円を満たすには、
月々4万3000円を積み立てる

 たとえば今の年齢が30歳で、65歳までの35年間で1800万円を築こうとしたら、毎月の積立金額はいくらになるでしょうか。35年間ということは420ヵ月ですから、1800万円を420で割れば、月々の積立金額を計算できます。4万2857円です。

 約4万3000円として、自分の今の収入と支出のバランスから、最も続けられそうと思える金額で積立投資をしていけばいいでしょう。

 ただし、例外もあります。それはたとえば親の遺産などまとまった資金が入ってきた場合です。この場合はできるだけ早く、その資金を新NISA枠に入れたほうがいいでしょう。

 若い世代なら、まず1万円程度から積み立てを始めて、時間の経過と共に収入が増えていくことを前提に、徐々に積み立て額を増やしながら、リタイア期までに1800万円を計画的に投資完了させることも考えてみてください。

 もし2000万円くらいのお金がポンと入ってきたラッキーな方であれば、毎年360万円の非課税枠を目いっぱい活用して投資に回し、5年間という最短期間で1800万円の非課税枠を埋めてしまえばいいのです。

 有利・不利という点だけに焦点を絞って考えるなら、できるだけ満額で非課税期間を長くしたいので、1800万円の非課税枠は早く埋めるに越したことはありません。

 また、ある程度、預金に大きなお金を置いている人も、それを原資にして新NISA口座にシフトさせることをお勧めします。そのような場合には、毎年360万円の枠を全力で埋めに行ってください。

 ただし、前述したようにまだ30代前後で、長く資産形成を続けられる人は、自分のできる範囲で無理なく続けることを心がけましょう。

【答え】
 30歳くらいの若い人なら、65歳までに1800万円の枠を満たすつもりで積立投資を続ける。ある程度、まとまったお金がある人は、5年間という最短期間で1800万円の非課税枠を埋めるのがいい。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、2023年6月に退任。
2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。
なかのアセットマネジメント:https://nakano-am.co.jp/