コロナ禍による在宅勤務や生活スタイルの変化などにより、若い人たちの間でつみたてNISA口座を開設する動きが急増。2024年からは新NISAがスタートした。新NISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)の内容から一部を抜粋・公開してきた本連載。その特別編として、なかのアセットマネジメント 代表取締役社長の中野晴啓さんに「投資に関する素朴な疑問や、新NISAを使って具体的にどうお金を増やしていったらいいのか」について、Q&A方式で答えていただいた。新NISAを使って投資や資産形成を始めてみたいという人に向けて、そのポイントをわかりやすく紹介していく。(構成:鈴木雅光、撮影:石郷友仁)

【投資のギモンQ&A】アクティブ型はインデックス型よりも成績が悪いと聞きます。もしアクティブ型を買うなら、どこに合理的な理由を見つければいいのでしょうか?Photo: Adobe Stock

――アクティブ型はインデックス型よりも成績が悪いと聞きます。もしアクティブ型を買うなら、どこに合理的な理由を見つければいいのでしょうか?

【投資のギモンQ&A】アクティブ型はインデックス型よりも成績が悪いと聞きます。もしアクティブ型を買うなら、どこに合理的な理由を見つければいいのでしょうか?中野晴啓氏:なかのアセットマネジメント 代表取締役社長

中野 定量的事実としては、長期的にアクティブファンドの8割がインデックスファンドに負けるというデータがあります。

 そのため、インデックスファンド志向の個人投資家からは、「だからインデックスファンドを買っておけばいいんだ」というような声が上がってくるのです。

 しかし、この「アクティブファンドの8割がインデックスファンドに負ける」ということデータを、諸事情も踏まえて俯瞰したファクトとしてとらえる必要があると思います。

 どういうことかというと、これは資産運用業界全体の問題であるということです。

 

いいアクティブファンドは、少数派にすぎない

 日本だけではなく、世界中でアクティブファンドは、あまり品質の良くないものがたくさん作られ、売られてきたのです。だから世界的に見ても、アクティブファンドの多くが、インデックスファンドに勝てないのは、ある意味で当たり前のことなのです。

 もちろん、アクティブファンドにもいいものはあります。課題解決も含めて投資先企業に深い思い入れをもち、世の中を少しでもいいものに変えるための先鞭をつけていく。そのために高い理念、投資哲学を持ち、厳選した企業に投資していく。これが王道的アクティブファンドです。

 ただ、そうした本格派でかつ良質なアクティブファンドは、世界中を見渡してみても、残念ながら決して多くはない。と言うより、本当に少ないのです。他方で、多くのアクティブファンドは、そもそも長期投資を前提に設計され、運用がなされていない、と言わざるを得ません。

日本の証券会社や銀行など販売金融機関は、
販売手数料を稼ぐことを主眼としている

 やはり、この日本で運用されているアクティブファンドも似たようなものです。大半のファンドが目論見書上は中長期的な運用財産の成長をうたってはいるのですが、。実際は短期的な市況や流行りのテーマに即して、目先の運用成果を追いかける類のアクティブファンドのほうが、実は圧倒的に多いのです。

 これまで証券会社や銀行などの販売金融機関は、顧客の獲得を営業目的に据えてきたことから、旬のテーマで顧客の関心を誘い、短期的目線で投信を取り扱っていたことは事実です。

 さらには、基準価額がちょっとでも値上がりすると、解約を促して、様々なファンドに乗り換え投資を勧める営業姿勢が、長い間、業界スタンダードだったため、新設ファンドを乱造して劣悪なアクティブファンドが残がいのように放置されている状況は、今も解消したとは言い難いのです。

 こんなことが、投資信託の実際の販売現場では繰り返されてきた中では、アクティブファンド全体の運用成績が統計上は芳しくないのは必然のことで、これがインデックスファンドに対してアクティブファンドの運用成績が長期的には悪化してきたことの、データには表れない事実だと言えましょう。

 私がなかのアセットマネジメントという運用会社を設立して、本格的なアクティブファンドを2本立ち上げたのは、こうした統計上表れる合成の誤びゅうを正したいと思うからです。まだ産声を上げたばかりの小さな2本のファンドですが、本格的なプロフェッショナルの自覚を持った投資信託であると自負しています。これからの長期的運用成果に、ぜひとも注目していただきたいと思います。

【答え】
 アクティブファンドの8割はインデックスファンドに負けるというのは、資産運用業界全体のビジネスモデルに誘因される。私たちが立ち上げたファンドは、そこへのアンチテーゼである。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、2023年6月に退任。
2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。
なかのアセットマネジメント:https://nakano-am.co.jp/