現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。
最高の脂肪ーオメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸は健康のために最も重要な脂肪だ。
脂肪性の魚から摂取できるほか、チアシードや亜麻仁(あまに)、ヘンプシード(麻の実)、クルミに含まれる脂肪から体内で合成することもできる。
オメガ3脂肪酸は特に脳の健康に良い。
2021年に人間を対象に実施されたランダム化比較臨床試験は、医薬品グレードのEPA(エイコサペンタエン酸)/DHA(ドコサヘキサエン酸)魚油を1日約3.4グラム摂取することによって、30ヵ月にわたって発話流暢(りゅうちょう)性、言語、記憶、視覚運動協応といった認知機能の大幅な改善につながったことを明らかにした(被験者の年齢中央値は63歳だった)。
私は神経保護効果のために医薬品グレードのノルウェー産魚油を1日約4グラム摂取している。
定期的な魚油の摂取は、早死にや心血管疾患、心疾患、脳卒中のリスクを低下させることも研究で報告されている。
魚油は、炎症マーカーを低下させ、インスリン抵抗性を改善し、動脈のプラーク〔血管内壁の盛り上がり〕を減少させる。
私がADHD(注意欠如多動性障害)を克服し、以前よりも脳機能を向上させた鍵のひとつは、オメガ脂肪酸のバランスを改善したことだと考えている。
オメガ6脂肪酸も必要だ。だがこれは私たちが食べすぎる傾向にある多くの食品(ほとんどの植物油、従来の方法で飼育された家畜の肉や卵、加工食品など)に含まれる脂肪なので、過剰に摂取しがちだ。
オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸は両方とも必要だが、狩猟採集民だった私たちの祖先は、これらを大体1対1か、せいぜい3対1のバランスで摂取していたとみられる。
一方、現代人の多くは、オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸を30対1の割合で摂取しており、炎症を誘発するバランスになってしまっている。
オメガ3脂肪酸の摂取を増やせば、脂質バランスを整え、神経発生を促し、心疾患リスクを低減できる。
妊娠中の女性がオメガ3脂肪酸の摂取を増やせば、生まれてくる子どもの代謝の健康を高められる。
2020年のある研究は、妊娠中の女性にとって、魚を食べることによるメリットが水銀曝露(ばくろ)のリスクを上回ることを明らかにした。
別の研究では、魚油によって炎症を抑え、インスリン抵抗性を高め、動脈のプラークを減らし、夜間視力を25%改善できることが報告されている。
私はオメガ脂肪酸のバランスが健康にきわめて重要だと考えているため、患者全員にオメガ脂肪酸バランスの検査を実施している。
(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)