なぜ昼酒は後ろめたく、泥酔して記憶をなくすと自己嫌悪に陥るのか写真はイメージです Photo:PIXTA

「酒を飲むのも仕事のうち」という表現がある。本来、酒は娯楽的な営みのはずだ。現代人が、お酒と“マジメ”に向き合ってしまうのはなぜなのか。社会学者が解説する。※本稿は、社会学者の右田裕規『「酔っぱらい」たちの日本近代 酒とアルコールの社会史』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。

「酒を飲むのも仕事のうち」は
20世紀に広がった価値観

「酒を飲むのも仕事のうち」という表現がある。

 20世紀半ばから後半期にかけて、小説やテレビドラマ、ビジネス書などで頻繁に用いられており、ある世代以上には、馴染み深いのではないか。

「酒を飲むこと」は通常、「仕事のうち」には入らない。むしろそれは、「仕事」から離れ、「仕事」を忘れることを目的とした、娯楽的な営みのはずだ。ところが、勤め人にとっては、「酒を飲むこと」が、しばしば「仕事」となって覆いかぶさってくる(たとえば得意先との接待飲酒や、職場の宴会・飲み会など)。「酒を飲むのも仕事のうち」のニュアンスは、さしあたり、このように説明できる。

「上司との飲み会」を「必要だと思う」人びとが12%、「まあ必要だと思う」のが38%という昨今の職場事情をかんがみると(「会社(職場)の人とのお酒の飲み方に関する意識調査」キリン食生活文化研究所、2008年、全国の20歳以上の男女1万2991人が回答)、確かに20世紀的な香りが充満した表現である。近年、メディアで使われる機会がめっきり減ったのも、この古めかしい香りのためだろう。