その走りはまさに現代版“ハコスカR”
果たしてその乗り味の第一印象は“スパルタン”だった。とにかくアシの動きがソリッドでかつ姿勢をフラットに保とうとするから、街中ではどうしてもシートの下に硬い板を敷いたような乗り心地に思える。今やセダンといえどもスペシャルな形なわけだから、スタイルからうける先入観と乗り心地の違いに戸惑う人は少ないかもしれないが、セダンが主流の頃なら “乗り心地が悪い! ”とはっきり文句の一つも出たに違いない。街乗りのゴツゴツとした印象で“これはもうダメだ”と思うような方はスタンダードグレードを選ぶか、いっそ背の低いモデルを諦めてエクストレイルあたりを検討された方が良さそうだ。
ニスモの本領発揮はアベレージ速度が上がってから、つまりは高速クルージングから。70km/hを超えたあたりから板のようだった腰下にしなやかさが加わり始める。路面からのショックをすみやかにいなし、段差のショックさえとたんとたんと心地よい。さらに速度を上げて新東名の120km/h区間領域になってくると空力も利きはじめ、スタンダードグレードとは明らかに異なる“落ち着き”をみせる。路面に張り付くとはこういうことなのか、と実感できることだろう。
もちろん、スカイライン ニスモのポテンシャルをさらに解放したければ、ワインディングロードに持ち込めばいい。大きくなったタイヤから大パワーと大トルクを発散し、意のままのハンドリングを見せる。これはまさに現代版のハコスカRである。
デビュー当初はクルマ好きから散々けなされたモデルだった。スカイラインはもう終わったとまで言われた。けれども10年経ってV37スカイラインは“ハコスカ”に先祖返りした。自発的に、ではない。相対的に、だけれども、そこがまた面白い。商品を企画した担当者にとっては皮肉でしかないだろうけれど!
コクピット回りのデザインや、街中のパワートレーンフィールなどに古さを感じるが、それもまた味わいだ。新車で買えるクラシックモダンという意味でも、このスカイラインはやっぱりハコスカであった。