子どもの頃に「おとなしい」と言われて嫌な思いをした方は多いのではないでしょうか。言っているほうは悪気はなくても、「おとなしい」という言葉にはどこか否定的な響きがあります。「内向的」という意味合いが込められている場合が多いからです。「外向的」な性格で悩んでいる人には会ったことがありませんが、「内向的」であることはよくないことと世間では受け止められてきました。しかし「内向的」な性格にも長所はたくさんあるのです。世界の大富豪イーロン・マスク、「ハリー・ポッター」シリーズの生みの親JK・ローリング、アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズなど、世界の偉人とも言われる多くの成功者は、子どもの頃に内向的な性格でした。一人で深く思考を重ねるのが好きでした。だからいじめの対象になることも少なくありませんでした。しかし彼らは、ある時点で自分を成長させ、自分の良さを保ったまま、世に出ることができたのです。本連載では、最新の脳科学研究から明らかになった、「おとなしさの真実」とさまざまな「性格をリセットして成長させる方法」をお伝えします。

【脳科学の新常識】「仕事が速い人」になりたければ「誠実性」を磨けPhoto: Adobe Stock

「誠実性」は全ての作業効率を高める万能の性格

 おとなしさの特徴でもある「誠実性」があると、「仕事まで速くなる」というデータも出ています。

 2019年のフロリダ州立大学のリサーチで、次の5つの作業効率を高めるために、どんな性格が関係しているかが調べられました。

1.自分が体験したことをどのくらい思い出せるか(エピソード記憶)

2.どれだけ速くレスポンスできるか(スピードを要する実行機能)

3.空間認知力

4.言葉を正しく使う作業

5.数的推理力

 その結果、「誠実性」が高いと5つ全ての能力が上がることがわかったのです。

 外向性や開放性、協調性などの性格は部分的な作業の効率を高めますが、誠実性は全ての作業効率を高める万能とも言える性格でした。

 つまり、コツコツ取り組もうとする姿勢や、動画を見たいという誘惑があったとしても自分の衝動をコントロールできる力があるほど、仕事は速くなるということです。

 他のリサーチでも、誠実性の高い人は、マルチタスクの効率を最大19%高めたり、自分を律して計画を立てたり、ゴールから逆算して計画を立てたりするのもうまく、効率的に行動する人が多いことが数々の研究で示されています。現代の社会では、コスパやタイパが求められますが、まさに誠実さのあるおとなしい人は仕事の効率がよいことを意味しています。

「うさぎとカメ」という物語がありますが、うさぎはまさに目立つ外向型の人でしょう。すごいスピードで報酬を求めてゴールに向かっていきます。一方で、カメは「おとなしい人」です。内向型で誠実性が高いため、自分のペースで一歩ずつ確実に進んでいきます。

「おとなしい人」は地味で目立ちません。しかし、この「おとなしさ」こそが、最終的に人生のゲームを勝利に導く鍵となることが世界的にも注目されてきているのです。

※本記事は『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』西剛志(ダイヤモンド社)より抜粋したものです。