懸案だった防衛省などへの過大請求問題に決着がつき、再出発を期する三菱電機。一見、実現不可能であろう高い成長目標を引き続き掲げる山西健一郎社長の真意は、どこにあるのか。

「2013年度までに売上高4兆円、海外売上高比率40%。10年の社長就任時に掲げたこの目標は、まだ諦めていない」

 三菱電機の山西健一郎社長は3月19日、週刊ダイヤモンドを含む複数メディアに、その胸中を明かした。そして、この発言は多少の驚きを持って迎えられた。その理由は、目標に掲げた売上高と海外売上高比率という二つの経営指標の推移を見れば明らかだ(図(1))。

 売上高を見ると、過去10年で4兆円を超えたのは、過去最高益を記録した07年度に一度きり。また、12年度の業績予想が3兆5200億円ということを考えると、目標達成には1年でじつに4800億円もの売り上げ拡大が必要な計算になる。

 この10年間で一度も達成したことのない、急速な規模拡大の可能性を示唆しているのだ。

 一方、海外売上高比率は右肩上がりではあるものの、02年度の28.9%から11年度で33.5%と、この10年で4.6ポイントという上昇幅だ。12年度の第3四半期決算時点で36%ということを考えても、わずか1年で過去10年分ほどの伸びを達成しなくてはならない計算になる。

 これには山西社長も「確かに計画を立てた当初よりは厳しい状況」と認めるものの、「現時点では13年度の達成を諦めていないし、少なくとも14年度には確実に達成する方向で進めている」と強気の姿勢を崩さない。

 山西社長がこれらの目標にこだわるのは、自身が三菱電機の成長を推し進める役割にあることを自任しているからだ。