リーマンショック後の円高に苦しめられたマツダが、今度は新たな為替リスクに苦しんでいる。海外生産比率を高める構造改革を進めてきた、同社の為替耐性の現状を分析する。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)
マツダの業績が好調だ。2015年度上期(4~9月)の売上高は前年同期比17%増の1兆7005億円、営業利益も同様に21%増の1259億円をたたき出した。
グローバル販売台数は上期として過去最高の76万4000台に達し、通期見通しも期初計画を上方修正。15年の日本カー・オブ・ザ・イヤーでも4代目「ロードスター」がホンダ「S660」とのスポーツカー対決を制し、栄冠を手にしたことは記憶に新しい。
ところが、である。こうした輝かしいマツダの業績を、株式市場は評価していない。
15年の株価パフォーマンスを見ると、年初来の変動率は▲12.2%と、自動車メーカーの中でもワースト銘柄となる事態に陥ったのだ。日産自動車が+19.5%、富士重工業が+16.4%と対TOPIX(東証株価指数)でも好成績だったのに比べると、いかに見劣りするかが分かる。
なぜか。皮肉にも、今やマツダは「円安局面において、その恩恵を受けられない」(中西孝樹・ナカニシ自動車産業リサーチ代表)という自動車メーカーに“変貌”したからだ。
典型的な輸出企業だったマツダには、円高に翻弄されてきた苦い過去がある。リーマンショック後の円高時代となった08~11年度には、実に4期連続の最終赤字に陥った。
そこでマツダは、ついに巨額の投資負担となる海外生産拠点の設立を決意する。国内生産を減らすことなく、今後は海外で増産していくことで海外生産比率を3割から5割に引き上げる「構造改革プラン」を12年2月に発表した。
そして14年10月、マツダにとってタイ、中国に続く27年ぶりの主要な海外生産拠点となるメキシコ新工場がいよいよ稼働を開始。こうした現地化を着々と進めてきたことで、円と米ドルの為替レートが1円動いたときの為替感応度(営業利益ベース)は08年度の27億円から、今や13億円にまで縮小した。円高・ドル安には強くなったが、逆に言えば15年の円安・ドル高局面では恩恵を受けにくくなったというわけだ。