それは、閉店間際のバーでふと思いつく類いのとっぴな計画だった。2022年5月、ウクライナの軍幹部や実業家が数人集まり、ロシアの侵攻を食い止めた自国の目覚ましい戦果に祝杯を挙げていた。酔いや愛国心から気分が高揚する中、誰かが過激な次の一手を発案した。ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」を破壊してはどうか。ロシア産ガスを欧州に運ぶ2本のパイプライン(ノルドストリーム1と2)は結局のところ、クレムリン(ロシア大統領府)の軍事機構に何十億ドルもの資金を供給している。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に自らの侵攻の代償を払わせるために、これ以上良い方法があるだろうか。それから4カ月余り後の9月26日未明、北欧の地震学者たちは数百キロ離れたバルト海に浮かぶデンマークのボーンホルム島付近で、海底地震または火山の噴火を示すシグナルを検知した。それを引き起こしたのは、3回の強力な爆発と、デンマークの二酸化炭素(CO2)年間排出量に匹敵する過去最大の天然ガス漏えい事故だった。
「ノルドストリーム」爆破事件の真相、始まりは酒場での会話
民間実業家が資金を出し、軍司令官が指揮、ゼレンスキー大統領の承認撤回も間に合わず
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