日本の名目中立利子率は1.8%
0.25%の政策金利は低すぎる

 FRBの場合、仮に自然利子率の値として、1.3%を用い、期待インフレ率として、2%目標でかかげる消費者物価上昇率の2%をとるなら、名目中立利子率は3.3%となる。これに比べると、9月FOMCで示された政策金利の今後の見通しはやや低めだ。FOMCメンバーが考えている自然利子率の値は、1.3%より低いのかもしれない。

 同様に日本の場合の中立金利を考えてみると、仮に消費者物価上昇率を2%、実質自然利子率が▲0.2%なら、名目中立利子率は1.8%になる。したがって、現在の政策金利の水準は低すぎることになる。つまり、過度の金融緩和状態になっていると考えられる。

 したがって日銀は、出来る限り早い段階で政策金利を引き上げるべきだ。

 ところが、日銀の幹部からは、自然利子率や中立金利に依存することに慎重であるべきだとの発言が相次いでいる。「推計結果には幅があるから」というのがその理由だ。

 しかし、どんな推計にも幅がある。「だから使えない」というのでは、政策決定にデータを用いることが全て否定されてしまうことになる。

 また、推計をどのように用いるかという問題もある。中立利子率が1.8%と推計されたからといって、政策金利を文字どおり1.8%にする必要はない。1.5%にとどめることも十分あり得る判断だろう。

 重要なのは、0.25%程度という現在の政策金利の誘導目標が低すぎるということだ。もしそうではないというのであれば、なぜ否定するかを示すデータを示し説明する必要がある。

(注1)September 18, 2024: FOMC Projections materials, accessible version、Fig.2。
(注2)杉岡優、中野将吾、 山本弘樹、『自然利子率の計測を巡る近年の動向』 2024 年8月