日本銀行の利上げと量的引き締め開始が契機となった8月初旬の急激な円高・株安は日銀の利上げが早すぎたから起きたのではない。遅すぎたからである。市場が落ちつけば日銀は年内に利上げを再開するだろう。政策金利が1%に達するまではおおむね3カ月に1回ペースで引き上げるとみている。(BNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミスト 河野龍太郎)
日銀のタカ派化に米国の景気後退懸念が加わり
急激な円高・株安が進行
日本銀行は、7月会合で利上げに踏み切ったが、その直後、金融市場では、急激な円高・株安が生じた。
量的引き締めと利上げの同時決定というサプライズに加え、植田和男総裁の記者会見も継続的な利上げを意識させる内容で、日銀のタカ派化が強く意識されたところに、米国で7月雇用統計が下振れたことで、米景気の後退が懸念され、FRBによる利下げへの期待も高まったことが背景にあった。
しかし、こうした市場の混乱を受け、内田眞一副総裁は8月7日の講演において、「内外の金融資本市場の急激な変動がみられる下で、当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要がある」と述べるなど軌道修正し、その後、米国でも小売統計が上振れるなどしたことで、米景気の後退懸念は後退し、金融市場は落ち着きを取り戻している。
8月前半はジェットコースターのような展開だったが、日銀の金融政策の先行きをどう考えるべきか。次ページでは、景気、物価の状況を踏まえ、分析・予測していく。