30年ぶりの「政策金利0.5%」は年内か?植田日銀が追加利上げを急ぐワケPhoto:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 7月末の利上げ決定直後に株価が急落し、日本銀行は事実上追加利上げの中断を余儀なくされた。しかし、日銀保有の長期国債残高の縮小は続き、非伝統的金融政策の出口戦略は前進している。筆者は、金融市場の落ち着きを確認しつつ、今年12月または来年1月には0.5%への利上げがあるとみる。その後も中立金利に向けて数回程度の利上げが想定される。

浮き彫りになった出口戦略の全貌

 日本銀行は、今年3月18、19日に開かれた金融政策決定会合でマイナス金利政策とオーバーシュート型コミットメントの終了を決め、まずは異次元金融緩和の出口を抜けた。無担保コールレートが政策金利に復活し、その上下の操作を行う「普通の金融政策」に戻った。

 もっとも、政策金利の誘導目標はゼロ~0.1%に設定され、長期国債は日銀による毎月約6兆円ペースでの買い入れが続くなど、実態としてゼロ金利政策や量的緩和政策といった非伝統的金融政策から抜け切れない状態だった。

 量的金融緩和状態の解消と中立金利水準への政策金利引き上げという「量」と「金利」の両輪で非伝統的金融緩和政策を脱する方向性はすでに見えていた。ただ、それを実際にどう進めていくかというシナリオまでは見えていなかった。

 その点、7月30、31日に開かれた金融政策決定会合での政策変更により、出口戦略の全貌が明確になった。まず、長期国債買い入れの減額計画が決まったことで、今後2~3年のうちに日銀による長期国債の買い入れは、量的緩和政策とは別に行っていた(経済成長に伴う経済規模の拡大に合わせてマネーを供給する)「成長通貨供給買い入れ」(輪番オペ)を除き終了し、日銀保有の長期国債残高の縮小基調が続くことになる。