富裕層の海外シフトが進む理由(1)
高額な相続税問題

 日本はもともと、富裕層のみならず、都内に自宅を持っているような準富裕層であっても相続税がかかる国です。理由は、基礎控除(相続税を払うか否かのボーダーラインのこと)にあります。

 アメリカでは相続税の基礎控除が実質的に十数億円ほどありますが、日本では5000万円以下になることが多く、都内に自宅を保有するような一般の層にまで相続税が課されます。最高税率も55%となっており、資産に課せられる税金が高い国となっています。

 石破氏はもとより反アベノミクス・増税路線です。申告所得1億円をピークに実効税率が低下する“1億円の壁”を踏まえて議論されている金融所得課税の増税も今は封印しているようですが、「増税」、特に富裕層に対する増税は、税目はどうあれ、間違いないところでしょう。

 しかし、シンガポールやマレーシア、ニュージーランド、アラブ首長国連邦(UAE)など海外の多くの国では税制面での優遇措置があります。それゆえに、投資家や富裕層にとって魅力的な選択肢となっているのです。

 特に、高収入の士業など世帯金融資産1億円以上の富裕層は別荘を持つ感覚で永住権や投資家ビザを利用することができます。また、会社をバイアウトしたような世帯金融資産5億円以上の超富裕層に至っては、相続税を含めた資産課税負担の軽減を図る手段として海外を視野に入れていくことになるでしょう。