現行型ラングラーのラインアップは、スポーツ/サハラ(839万円)/ルビコン(889万円)の3グレード構成。全車2L直4ターボ(272ps/400Nm)を搭載し、駆動方式はもちろんハードコアの4WD。12.3インチの新世代のインフォテインメント機能を導入するなど、装備は一段と進化している。
ところで道具とは、人間の可能性を広げるために工夫された手であり、足である。その真価は人間のライフシーンにいかに寄り添っているかどうかで評価することができる。いくらスペック的に優れた道具であっても、生活をプラスに転換する力がなければ、残念ながら優れた道具とはいえない。それはプリミティブなナイフでも、スマホやパソコン、クルマなどの複雑な道具であっても同じである。
生活をプラスに転換するかどうかは、それを使いこなすユーザーのスタンスしだい。とはいえ、その道具自体に、ユーザーの意欲をかきたて、あるいは潜在能力に働きかけるプラスαの力があるか否かが、大切な要因ではないだろうか。人間は、あるきっかけでライフスタイルが広がる。そのきっかけが道具との出会いであるケースは多い。ジープ・ラングラーは、素晴らしい新たなライフシーンへの転換を“誘惑”する道具の代表である。
路面を鷲掴みにする独特の走行フィール
全地球対応の本物感で魅了する
久しぶりにラングラーに触れ、その思いを新たにした。実に魅力的である。ボディは大柄で、スリーサイズは4870×1895×1840mm。取り回しにはそれなりに気を遣うし、いまどきの至れり尽くせりのSUVほど快適ではない。ジープの代表車らしく、その悪路走破性は圧巻。とはいえ個人的にはタフな全地球対応のパフォーマンスなど、使いこなす自信も機会もない。それでも「乗りたい!」と無条件で思わせる強力なパワーがラングラーにはある。その強い存在感と主張は、まさにヒーロー級だ。
パフォーマンスはなかなか優秀。この体躯に2Lターボと聞いて非力を心配する向きもあるだろう。それはまったくの杞憂だ。実際の走りは従来の3.6L・V6(284ps/347Nm)以上にパワフルでスムーズである。ターボだから本格的にパワー/トルクが湧き上がるまでに若干のタイムラグはあるが、通常走行時はまるで気にならない。しかも燃料はアメリカ車のよき伝統でレギュラー指定。今回の試乗ではWLTCモード(9.8km/L)と、ほぼ同等の燃費をマークした、絶対的にはそれほど良好とはいえないが、それでも気軽に出かけようと思うレベルをキープしている。