「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。

親子Photo: Adobe Stock

老いた親を無意識に拘束してしまう人が使っている言葉

【×】親へのNG声かけ「外出するときはちゃんと教えてよ! なにかあったらどうするの?」

【◯】親を傷つけない声かけ「3丁目の板垣さん。1人で外出して転んで骨折して手術だって。もう3ヵ月も入院してるんだって」

 これは認知機能には問題がないものの「屋外方向は要介助レベル」と判断されている親がいらっしゃる方からのご相談で多いケースです。

 NGの声かけについては、家族であれば日常的な言い方のように思います。また、親を心配する気持ちがあっての発言ですから、悪いことでは決してありません。

 ですが、NGの言い方を続けてしまうとスピーチロック(speech lock)といって精神的虐待を与えてしまう可能性があります。スピーチロックとは言葉による拘束を意味します。

 具体的には「ちょっと待って!」「~しないで!」など、相手の行動を制止または制限する言葉を指します。

「単なる声掛けじゃないか」と思うかもしれませんが、受け取った側からすると「かたちのない拘束」になってしまうのです。

 スピーチロックは相手の意思を無視して命令する言葉全般が該当し、苦痛を与える行為となります。血のつながっている親子だからこそ遠慮がないため、うっかり使いがちです。