「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。

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老いた親がつまずくことが増えた

「シルバーカーを使ってみない?」。この質問は、1人で歩くことがむずかしくなり、つまずきや転倒が増えてきた親を心配する声かけです。

 シルバーカーは歩行をサポートする福祉用具です。スーパーの買い物などを収納できる「押し車」を引いている高齢者を見かけたことはないでしょうか。それがシルバーカーです。

 こういった提案をする場合、「年寄り扱いするな」と切り返されることが少なくありません。親としては「自分は年老いていない」と感じているからです。

 とはいえ、つまずきや転倒は、最悪の場合、入院につながったり、寝たきりの原因になったりします。加えて、その寝たきりが「認知症」も進行させるリスクがあります。必要なタイミングで、歩行を助ける道具を用意しておくのは大事なことです。

 こんなときは「脳内で『ワクワク』とした気持ちが湧き上がる声かけ」をするのがいいでしょう。たとえば「昔みたいに、もっと自由にあちこち行きたいって思う?」などです。

 足腰が弱くなっている高齢者は「もっと楽に動きたい」と思っているものです。同時に、その想いを叶えられる手段があるなら知りたいとも考えています。皆さんが「そうだね」という返答を親から引き出せたら、シルバーカーを紹介しましょう。前向きに利用を検討してくれるはずです。

 老いてきた親の変化に気づけるのは皆さんしかいません。同時に、その変化に対する提案も血のつながった親子だからこそできるものです。親もプライドはありますが、それも子どもからの愛情には負けます。皆さんにしかできないことですから、ぜひ積極的に動いていただけると幸いです。