少し円安になってきたとはいえ、国内造船業が厳しい状況にあることは変わらない。かつて50年近く新造船の建造量で世界のトップだった日本は、今や韓国や中国に追い抜かれている。ところが、旧態依然の過当競争が続けられているイメージが強い造船業界で、関係者が熱い視線を送る夢のある遠大な構想が動き出した。
Photo:JAPAN MARITIME SELF-DEFENSE FORC/EPA=JIJI
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「そのような事実はありません」
4月22日、国内造船・重機2位の川崎重工業と同5位の三井造船が水面下で経営統合の検討を開始したという報道が駆け巡った。
すぐさま両社は完全否定のコメントを出したが、当事者以外にはどこか歓迎するムードが漂う。
そもそも造船業は、構造不況業種の烙印(らくいん)を押され、目の前では「2014年問題」(新造船の需要が落ち込み、13~14年に仕事が途切れること)で低迷戦が続く。そんな中で、頭数が一つ減ることは、生産設備の削減を伴うことから業界全体の利益にかなうのである。
古い話だが、かつて1980年代後半の第2次造船不況時には、造船業界が生き残るために企業規模に応じて横並びで設備廃棄に踏み切った。当時、建設省(現国土交通省)が裏で主導して、川崎重工と三井造船を統合させる計画や、そこに石川島播磨重工業(現IHI)を加えるという大型合併の絵図もあった。