国内の総合重機メーカーでは、最も積極的に海外展開を進めてきた川崎重工。近年は、中国事業の成功により、収益構造に変化が表れてきた。それは、将来の姿さえ暗示させる大きな予兆でもある。

 11月2日、造船・重機大手6社の中間決算が出そろった。2012年度の連結決算の通期見通しは、三菱重工業と日立造船を除く4社が営業利益の段階で大幅減益予想を出すなど、総合重機メーカーの苦しい状況を浮き彫りにした。

 なかでも、下方修正の幅が最大だった川崎重工業は、営業利益で前年同期比37.3%減の360億円、経常利益は同21.4%減の500億円となった。

 図(1)のように、住友重機械工業や三井造船も営業利益が30%以上ダウンする見通しだ。だが、川崎重工の場合は、今年4月の11年度の連結決算発表以降に「12年度の目標値(営業利益520億円、経常利益560億円)を1年前倒しで達成できた」(長谷川聰社長)と胸を張っていただけに、嫌でも“落差”が目立つ格好になった。

 その原因は、はっきりしている。11年度の営業利益574億円の半分近く、266億円を稼ぎ出していた精密機械部門の販売が大幅に減少したことだ。それが全体の営業利益を押し下げ、中間決算での60.9%ものダウンにつながった。具体的には、中国など新興国向けの建設機械の内部に搭載される「油圧機器」だ。最大の納入先は、中国市場で日本のコマツを抜いた中国メーカーの三一重工である。