「今年のヒット商品ベスト30」(日経トレンディ2024年12月号)で「大谷翔平売れ」を押さえ堂々1位となったのは「新NISA&『オルカン』投資」。初心者向きの全世界株式投信に1兆8000億円が流入した。だが、まだ投資をやったことがない人や、投資を始めても何かとお金にまつわる不安を払拭できない人も多いかもしれない。
そんななか、世界600万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルとゴールドマン・サックスCEOが絶賛する全米ベストセラーが話題となっている。世界的ベストセラー『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(東洋経済新報社)の著者で、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出されたニューヨーク大学スターン経営大学院教授のスコット・ギャロウェイ著『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』だ。9社を起業した連続起業家でもあり、日本で「GAFA」という言葉を定着させた全米屈指の人気教授が明かす「世界最先端のマネー戦略、人生戦略」とは? 「経済的自立を得ることは十分な『収入』を得ることではなく十分な『資産』を得ることだ。本書で“幸福な金持ち”になって人間関係に時間を投資し、人生を楽しもう」という本書から投資戦略のコツを抜粋・編集してお届けする(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。

「銀行口座に大金を残して死ぬ人」の残念な特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

上位1%の富裕層と生活格差

2020年、ボブ・ディランは、自らの全楽曲の著作権を4億ドルで売却した。

これで、もうお金が彼に悪態をつくことはないだろう。

ボブ・ディランが『イッツ・オールライト・マ』の歌詞を書いた1965年当時、いわゆる「中の上」の層に属する人たちでも、富裕層が持っていたうちの9割の豊かさを手に入れられていた(富裕層の家庭は大きな家に住み、ワンランク上のワードローブを持ち、ゴルフは公営コースではなくプライベートクラブでプレーしていた)。

それからの60年間、富裕層向けの産業が興隆した。
今日の富裕層は、休暇をすごす際、高級ホテルに泊まるだけではない。

彼らは一般客とは別の飛行機に乗り(ボブ・ディランはジェット機の「ガルフストリームⅣ」に乗る)、別のリゾート地に滞在し、別の景色を見る(一般客の入場が終わった時間外に)。

上位1%の富裕層は、通う病院も、食事をするレストランも、買い物をする店も、一般客とは違う。

一昔前の「富」とは、同じ会場にいて、良い席に座る程度のことを指していた。それが今は、別世界のような場所で生活することを意味するようになっている。

「富のポルノ」現象とは?

幸福のカギは、人生に何を期待するかである。

非現実的な期待を抱いていれば、幸福は実現しないだろう。
しかし、あなたが家を出たり、携帯電話を手にしたりするたびに、社会や企業が裕福なくらしの素晴らしさをささやきかけてきたり、そうしたくらしができないことを責めたりしてくる。

1%のお金持ちと99%の残りの人たちの生活格差が、毎日、目の前に投げかけられる。

疑似的な富を見せびらかす業界が、「インフルエンサー」を中心に発展している。

私たちは絶えず、自分が手に入れたものではなく、まだ手に入れていないものばかりを見るように仕向けられる。

これは、まさに「富のポルノ」と呼ぶべきものだ。

このようなシステムは、いつか改善されるかもしれない。
だが、そのときがくるまで、私たちは耐え忍ばなければならないのだろうか?
決してそんなことはない。

社会が変わるのを待つのではなく、現状のシステムの中でうまくやっていくためのスキルと戦略を身につけるほうが、はるかに賢明だ。

チャーチルの名言に学ぶ

英国の元首相ウィンストン・チャーチル(1874~1965)は、

「民主主義は最悪の政治体制である。これまで試みられてきた民主主義以外のすべての政治体制を除けば」

という名言を残している。

同じことは資本主義にも当てはまる。

つまり資本主義は最悪かもしれないが、他に比べればマシな経済的・社会的システムだと言えるのだ。

不平等は、持たざる者たちの野心を刺激する。
インセンティブは、結果に影響を生じさせる。
それが、社会を動かす原動力になっている。

社会のシステムが自分に合っているなら、それを最大限に活用すればいい。
そうでないなら、できる限りのことをすればいい。
どれも、あなたの責任ではない。

あなたが億万長者になるためにはリスクを抱えなければならないが、社会はそれよりも大きなリスクのある様々な問題を抱えている。

そして、経済的自立を得るまでは、あなたの時間は本当の自分の時間にはならず、ストレスの多くは非生産的なものになるだろう(そう、お金はあなたに悪態をつく)。

富を追求することは、あなたが不道徳で、貪欲で、利己的な人間であることを意味しないし、またそうであることを要求するものでもない。

銀行口座に多くのお金を残して
死なないために

むしろ、そうした資質は経済的自立への妨げになり、達成後の幸福を損なうだけだ。あなたと富の間にある障壁を乗り越えるには、味方が必要だ。

「貯蓄や投資は早く始めたほうがいい」
とアドバイスされたことがある人は多いだろう。

同じように、仲間やあなたのファンをつくることも早く始めたほうがいい。
そうすることで、人生のあらゆる場面で、本拠地で試合をするスポーツチームのような有利な立場が得られるようになる。

「この仕事、この投資、この取締役に誰が向いているだろうか?」と考えたときに、真っ先に彼らの頭に浮かぶ人になるべきだ(そして、それは可能だ)。

私たちの究極の目標は、豊かな人間関係に恵まれた人生を楽しむことであり、銀行口座に多くのお金を残して死ぬことではない

(本稿は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の一部を抜粋・編集したものです)