この連載は、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の小児科医でもある伊藤明子先生によるものです。テレビなど多数のメディアに出演されている信頼度の高い人気の医師です。
本書の読者からは、
「子を持つ親として、食事の大切さがよくわかった」
「何度も読み返したい本!」

といった声がたくさん届いています。不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験によってわかった本当に子どもの体と脳によい食事。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。今回は朝食と果物の関係性を解説します。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。

【小児科医が教える】朝食に足してほしい果物は「バナナ」。あともう1つは何?Photo: Adobe Stock

やっぱり朝食は大事

 体内時計という言葉を聞いたことはありますか? 私たちの体内には、

 ●脳にある「中枢時計」
 ●全身の細胞にある末梢の「末梢時計」

 があり、それぞれが情報をやりとりしながら働いています。これが体内時計です。
 朝食を摂ることで1日の活動のスイッチが入る、つまり体内時計のスイッチがオンになるので、朝食を決まった時間に摂ることが大切です。[*107,108]。朝食を抜くと体内時計のリズムが弱くなり、調子を崩しやすくなるという研究結果があります[*109]。

どうして果物は朝に食べるといいの?

 朝食にあと1つ何を出そう?と悩んだら、果物をプラスしてみましょう。果物は朝食に食べるのが一番です。1日のエネルギー源としてしっかり活用できます。

 おすすめの1つはバナナ。甘すぎず、ある程度の重量があるバナナは、朝食に摂ることで腸の活動を高めてお通じを促します。

 もう1つはキウイフルーツ。キウイフルーツに含まれる水溶性食物繊維で腸内環境が改善し、酪酸という、免疫調整・抗酸化作用など私たちの健康維持に欠かせない短鎖脂肪酸が増えたという研究があります[*33]。

 大事なのは、甘すぎない果物を朝に摂ること。バナナは比較的甘いですが、実際にバナナを摂取した研究では便秘改善、肥満改善、高血圧の改善などの結果が出ています[*34,35]。
 プラム、ソルダムや抗酸化力がとても高いラズベリー、ブラックベリー、ブルーベリーなどもおすすめです。これらのベリー類は日本では値段が高くあまり手軽に入手できませんが、特別なときにはぜひ選んでみてください。

果物の食べ過ぎには注意

 果物にはビタミン、ミネラル、食物繊維が含まれるのでカラダによい食材ではありますが、果糖という糖が含まれています。
 果糖を摂りすぎると、中性脂肪が増えて脂肪肝になりやすくなることが研究でわかっています[*30]。脂肪肝は肝臓の機能が落ちて、やがて肝臓がんにも進む状態です[*31]。小学生の子どもでも、最近は脂肪肝が増えています。また、果糖は糖尿病のリスクも上げてしまいます[*32]。甘い果物ではなく、酸っぱめの果物を意識して選びましょう。

(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本から一部抜粋・編集したものです)

*107 Lopez-Minguez J, et al. Timing of Breakfast, Lunch, and Dinner. Effects on Obesity and Metabolic Risk. Nutrients. 2019; 11(11):2624.
*108 Ruddick-Collins LC, et al. The Big Breakfast Study: Chrono-nutrition influence on energy expenditure and bodyweight. Nutr Bull. 2018; 43(2): 174-183.
*109 佐々木裕之ら. 時間栄養学的視点で健康な食生活リズム. 生化学. 2021; 93(1): 82-92.
*30 https://www.nih.gov/news-events/nih-research-matters/how-high-fructose-intake-may-trigger-fatty-liver-disease (2022年11月20日)
*31 谷合麻紀子. NAFLD/NASHの疫学. 日内会誌. 2020; 109(1):11-18.
*32 Bantle JP. Dietary fructose and metabolic syndrome and diabetes. J Nutr. 2009 Jun; 139(6):1263S-1268S.
*33 Richardson DP, et al. The nutritional and health attributes of kiwifruit: a review. Eur J Nutr. 2018 Dec; 57(8):2659-2676.
*34 Bae SH. Diets for constipation. Pediatr Gastroenterol Hepatol Nutr. 2014 Dec; 17(4):203-208.
*35 Oude Griep LM, et al. Association of raw fruit and fruit juice consumption with blood pressure: the INTERMAP Study. Am J Clin Nutr. 2013 May; 97(5):1083-1091.