途上国の子どもたちに教育機会を提供することを目指すNPO「ルーム・トゥ・リード」創設者兼共同理事長のジョン・ウッド氏と、著名経営コンサルタントの神田昌典氏。ウッド氏はかつて米マイクロソフト社で要職を務めた経験を持ち、一方の神田氏は公益財団法人・日本生涯教育協議会の理事を務めるほか、教育関連ネットワーク「KNOWS」を支援するなど、ビジネス分野のみならず教育界でも精力的な活動を行っている。
2013年4月、ウッド氏の来日により、「ビジネスと教育」という共通項を持つ2人による対談が実現した。
(文/千葉はるか 撮影/松谷康之)
大手企業も続々支援…ルーム・トゥ・リードの何が人を
惹きつけるのか?
神田昌典氏 お目にかかれて光栄です。まず、この対談の読者の方々のために今回の来日の目的をお聞かせいただけますか?
ルーム・トゥ・リード創設者兼共同理事長。クリントン・グローバル・イニシアチブのアドバイザリー・ボードメンバー。コロラド大学で経営管理学修士、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院で経営管理学修士を取得。1999年にマイクロソフトのマーケティング部門の重役の座を捨て、ルーム・トゥ・リードを設立。アジアとアフリカの10カ国で780万人以上の子どもに教育と読み書き能力という生涯の贈り物を届けている。最新刊『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』には、前著『マイクロソフトでは出会えなかった天職』の“その後”が描かれている。
《ルーム・トゥ・リードの実績》(2013年3月現在)
学校建設 1500校以上
図書館・図書室開設1万5000カ所以上
現地語出版 874タイトル
女子教育支援 2万人以上
ジョン・ウッド氏 3月に2作目の著書『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』を上梓しました。この本について日本のみなさんにご紹介し、ルーム・トゥ・リードの活動を知っていただきたいと思っています。
また、ルーム・トゥ・リード・ジャパンのイベントにも出席します。去年の日本のイベントでは、一夜で1億円以上もの寄付をいただくことができたんですよ。
神田 日本では、企業がNPOに寄付するという文化があまり浸透していないように思います。にもかかわらず、ルーム・トゥ・リードが日本において多くのサポートを受けられる理由をどのように見ていらっしゃいますか?
ウッド ルーム・トゥ・リードが活動の結果を数字で示せることが大きな理由のひとつだと思います。日本では、三菱商事、東京海上日動火災保険、アビームコンサルティングといった多くの大手企業がスポンサーになってくださっていますが、これはわれわれが企業のようにNPOを運営し、実績を数値で示しているからでしょう。企業で一般に使われる経営指標を用いるなど、ビジネス界の言語で意思疎通しながら協力し合えるのです。
また、日本企業のなかにはインド、ベトナム、バングラデシュといった途上国に進出し、投資をしているところもあります。そういった企業は、ルーム・トゥ・リードへの支援を通じて社会的責任を果たすことができます。
神田 ルーム・トゥ・リードが支援している国々は、アジア地域とアフリカ地域が多いですよね。多くの日本企業はこれらの地域の国々への投資に力を入れたいと考えていますから、ルーム・トゥ・リードの活動を支援することは日本企業にとってメリットが大きいのではないでしょうか。
ウッド おっしゃるとおりです。ですから、今後はぜひともより多くの日本企業にかかわってほしいと思っています。
私の2冊目の本の役割は、多くの日本の方々に、ルーム・トゥ・リードを通じて途上国の支援ができ、アジア地域の子どもたちに貢献できるのだと知っていただくことです。これは人道的な問題にとどまらず、ビジネスの問題でもあると思います。
世界には1日200円以下で暮らす人が約20億人いますが、その原因のほとんどは教育機会の不足にあるのです。もし10億人に教育の機会を届けることができたら、30年後、40年後にはアジアの経済発展、ひいては世界の経済発展に多大な影響があるはずです。