自分は将来どうなるだろう……。そんな不安を持つ人は少なくないのではないだろうか。「いつまで第一線でいられるか」「いつまで他人と競えばいいのか」「いまいる友達は60歳になっても友達か」「気力体力はどうなるか」「お金は?」「いまのうちにやるべきことは?」など疑問がつきない。そこで本連載では、2025年に60歳を迎える奥田民生の10年ぶりの本『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』の中から、民生流の「心の持ち方、生きるヒント」を紹介する。「力まず自然体でカッコいい大人」代表の奥田民生は、これまでどのように考え、どのように働き、どのように周りとの関係を築いてきたのか。その言葉を見ていこう。(構成/ダイヤモンド社・石塚理恵子)

孤独、孤立……どうすればいいですか?→奥田民生が友達をつくるべきだと言う理由
Photo by Takahiro Otsuji

友達はいるか?

 大人になっても友達はできるのか?

 いまの時代、仕事は家でできてしまうし、人に会う機会は歳と共に減ってくるから、「友達がいない」「友達がほしい」「孤独だ」という人は、自分から外に出て人に会っていくしかない。

困ったら「飲み屋」に行け

 友達がほしい人はまず、とりあえず近所の「飲み屋」に行くのはどうだろう。

 詳細は次に譲るけれど、寂しい夜は近くのBARにひとりで行って、マスターと喋って、そこから通って、だんだん他の客とも仲良くなって……みたいな展開も期待できる。

ある夜にあった話

 あるとき俺がたまたま見つけた店に入ってみると、カウンター席にはちょっと離れて2人の男、中にはママらしき女性が1人で立っていた。

 そこは昼は喫茶店で夜は酒を出す店らしく、俺は彼らのうしろでテーブル席に座ってコーヒーを飲んでいた。

 3人は楽しそうに話をしていてそれを側から聞いていると、どうやらこの男2人は知り合いでもなんでもなく、たぶんママ目当てで来ている通い客だ。

 2人は酒を飲みながらママを挟んで楽しげで、そんな様子を見ていると「こういうのってなんだかいいな」と思ってしまった。

 もちろんBARでなくてもママ目当てじゃなくてもなんでもいいけど、友達がほしければ行動しかない。

 趣味、スポーツ、レジャー……、そういうことでまずは知り合いをなんとか作る。がんばって作る。

 そういうことが大人は大事かもしれない。

人見知りならコバンザメ作戦

 ただ、どうにも人見知りだという人は……。

 たとえば俺の知り合いに、誰とでも仲良くなれる人がいる。

 そいつはすぐ友達を作るのだけど、俺はこいつのおかげで望む望まざるに関係なく、いつも巻き込まれて友達にならされる。

「今度○○さんとゴルフを一緒にやりましょう!」と、知らない間にラウンドが組まれていることもある。

 そういうときの俺は、メンバーの素性をチェックして「それなら会ってみよう」と思う……なんてことはまずなくて、気づけば強制的に会わされている。

 でもそうしているといつの間にかそのメンバーと、そいつがいなくても普通に会うようになっている。「知り合いの知り合いが友達になる」パターンだ。

 こういう人がいてくれると自然と友達ができるから、人見知りな人はまずこの「コバンザメ作戦」で増やすのもいいかもしれない。

棺桶を持ってくれる友達はいるか?

「友達がいない」なんて言いながら「人に会うのは苦手」なんて言っていると、新しい友達は一生できない。

 新しい友達がほしいのにいないとしたら、その原因は自分にある。

 友達は大人になってからでも案外できる。

 だから友達が欲しければまずは自分から動くことだ。

元々は人見知り

 ……なんて偉そうに書いているけど、俺も若いときは人見知りで、自分から友達になるなんてことはありえなかった。

 俺の場合、若いときは周りにいまよりものすごい数の人たちがいて、それは毎日「満員電車」に乗ってるみたいな感覚で「頼むからひとりにしてくれ」って思っていたのもあるけれど、いまになったら人見知りだなんて言うもんじゃないと思っている。

 なぜなら還暦にもなって「人見知りです」だなんて言っていたら、誰も俺の棺桶を持ってくれないことに気づいたからだ。

 だから俺は3年前から「人見知りじゃない」ことになっている。

すべては自分次第

 この歳になっても新しい友達はできる。

 それは俺が保証する。

 ただ友達ができるかどうかは自分次第。

 棺桶問題もあるけれど、友達は多い方がやっぱり楽しい。

 それもこの歳になってわかったことだ。

(本稿は奥田民生『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』からの抜粋記事です。)