自分は何も持っていない」「いつも他人を妬んでしまう」「毎日がつまらない」――誰しも一度は感じたことのある、やり場のない鬱屈した思い。そんな感情に寄り添ってくれるのが、クリープハイプ・尾崎世界観氏も推薦する『ぼくにはなにもない 愛蔵版』。この記事では、著者の齋藤真行氏に教えてもらった「ネガティブな気持ちを解消する方法」を紹介する。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬)

【敏感すぎて傷つく人へ】他人の言葉から心を守る生き方『ぼくにはなにもない 愛蔵版』より

他人の言葉を重く受け止めすぎない

人に言われたことを必要以上に気にしない人の特徴として、言葉の重みを「適切に軽減する能力」があります。

これは、必ずしも相手の言葉を軽視するという意味ではなく、「必要以上には他者の言葉を深刻に捉えない」という姿勢です。

以前ある政治家が不祥事を起こしたときのことを思い出します。

その人物は世間から激しい批判を浴び、大半の国民に嫌われたような印象でした。

もし自分が同じ立場だったら、きっと心を病んでしまうだろう、と思いました。

ところが、本人はまったく気にしている様子もなく、ふてぶてしい態度を保っており、臆することなく政治的な発言や活動を続けていました。

メンタルの強さに驚いたと同時に、「ああ、この人は他人の意見をほとんど重く受け止めていないんだ」と気づかされました。

もちろん、その振る舞い自体を肯定するわけではありません。

ただ私たちの場合は反対に、人の言葉をあまりに重視しすぎて、心を壊してしまう場合もあるのではと考えさせられました。

「すべての言葉を重く受け止める必要はない」「受け止め方も程度問題」という意識を持つだけで、私たちの心の負担は軽減されるのではないでしょうか。

現代では、SNSなどで全く知らない人から突然厳しい言葉を浴びせられることもあります。

こうした言葉は、ときに私たちを傷つけ、心に大きな影響を与えます。

しかしその重要度は、先の記事の「心のマンション」の例で考えるなら、「住人ではない、通行人からの声」と捉えることもできます。

知らない人の一言をマンションの大きな部屋の住人が言ったように大きく受けとめてしまうと、心のスペースが占領されてしまい、ストレスが溜まります。

しかし、その言葉の重要度は全体の割合からすると非常に低く考えてよい、ということをふまえるなら、メンタルに不調をきたすことも防げるはずです。

人に言われたことを気にするかどうかは、その人の物事への向き合い方や心の余裕に大きく関係しています。

多角的な視点を持つことで、相手の言葉を「その人の見方」として捉え、自分との間に適切な線引きができます。

また、心のスペースを「マンション」として考え、聞くべき言葉の重みを適切に割り振ることで、余計な負担を避けることができます。

自らの心のバランスを保っていくために、他者の言葉に対して「敏感さ」ばかりか、よい意味での「鈍感さ」をも身に着ける必要があるのかもしれません。

(本記事は『ぼくにはなにもない 愛蔵版』の著者、齋藤真行氏が特別に書き下ろしたものです)