ついに沖縄の新テーマパーク「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」の概要が発表された。株式会社 刀を設立し、さまざまな事業に挑戦してきた森岡毅CEOにとっても、特別な意味を持つパークである。森岡氏の4年ぶりの新刊『確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか』(森岡毅 今西聖貴/ダイヤモンド社)によると、「売上を増やす最大の鍵はコンセプトである」と書かれている。ならば、ジャングリア沖縄はどんなコンセプトでつくられているのか。探ってみたい。
(取材・亀井史夫/ダイヤモンド社)

【森岡毅の新テーマパーク】ジャングリア沖縄にあって、TDLやUSJにないものとは?画像提供:ジャパンエンターテイメント

約10年前に一度頓挫した沖縄プラン

 数百人の記者が詰めかけた会見の席上で、森岡氏はマイクを握り、力強く語り始めた。
「沖縄のテーマパーク構想は14年前から練っていました。実はUSJ時代に実現寸前までこぎつけたのですが、会社の事情で断念せざるをえなかったのです」(森岡氏)

 USJの2号店、3号店を大阪以外に水平展開するという構想の中で沖縄は候補地として浮上してきた。森岡氏は沖縄の日本における重要性に気づいていたのだ。南国リゾートとしての海の美しさ、鬱蒼と茂るやんばるの森、歴史のある独自の文化、そして飛行機で4時間の圏内に抱える20億人もの人口。

 たとえばハワイは世界屈指の南国リゾートだが、周囲には海しかない。しかしなぜ発展できたのか? かつてその地を見出し、投資し、リゾートとして育てた人がいたからだ。沖縄がハワイ以上のポテンシャルを持っていると森岡氏は強調する。沖縄は、日本の観光産業を変革する起点になり得る。それを知ってしまった以上、やらない選択肢はない。やらずして死ねない。

 USJ退社後、森岡氏は株式会社 刀を立ち上げ、さまざまな事業に挑戦しながら、沖縄のテーマパーク開業への準備を進めてきたのだ。

コンセプトはPower Vacance!!

 ジャングリア沖縄は、嵐山ゴルフ場の跡地につくられている。居抜きであるため環境破壊をすることなく転換が進んでいる。それだけではない。さらに数万本の植樹をすることでより自然環境を豊かにしていく計画だ。60ヘクタールの広大な総面積は、USJを上回る規模。だからUSJやTDL(東京ディズニーランド)のようなテーマパークができるのだろうかと想像してしまうが、同じことをしても意味がないと森岡氏は断言する。

「TDLやUSJのように鉄骨とコンクリートでできた施設を沖縄につくっても、人々はわざわざ沖縄まで来てくれません。東京や大阪では味わえない魅力ある体験を提供し、沖縄へ旅行しようという文脈をつくらなければなりません」(森岡氏)

 そこで重要になるのが「コンセプト」という考え方である。『確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか』(森岡毅 今西聖貴/ダイヤモンド社)によれば、コンセプトが売上を増やす最大の鍵なのだという。

 たとえば、老朽化し、遊園地としての魅力が低下していた西武園ゆうえんち。客にしてみれば、来園する理由を見つけにくい状況になっていた。そこで森岡氏は、人々がテーマパークを訪れる理由は何かに着目した。人々は「幸せ」を求めてテーマパークを訪れる。「古さ」を逆手に取り、「昭和」という包装紙で包んでお届けしたところ、大きな話題となり、集客は回復した。

 たとえば、新メニューを次々と開発しているのに売上が前年同月割れを続けていた丸亀製麺。この店の本来の魅力は、それぞれの店舗で粉から作っているうどんそのものの美味しさにあることに森岡氏は気づいた。そこで「ここのうどんは、生きている。」というキャッチフレーズとともに、あなたのためにつくっているという思いを込めて伝えるキャンペーンを行った。すると売上は再び右肩上がりに転じた。人を集めるには、その施設や商品やサービスが選ばれる「特徴」が重要なのだ。

 ジャングリア沖縄のコンセプトは、Power Vacance!! である。

「この週末どこに行こうか? という文脈ではなく、飛行機に乗って沖縄に旅行しよう! という文脈に乗せなくてはいけない。本物の贅沢感と一生モノの大興奮、この2つのベクトルを合成したものがPower Vacance!! です。さらにここに、沖縄の大自然の中の究極の解放感も加えたい。一生の思い出に残る旅になると想起させるものをつくっています」(森岡氏)

豪華で贅沢な22のアトラクション

 それらはどんなアトラクションなのか? おもなものを紹介していきたい。

DINOSAUR SAFARI(ダイナソー サファリ)
 ブラキオサウルスやステゴサウルス、トリケラトプスなど本物としか思えない迫力ある恐竜たちと間近で遭遇したと思ったら、突然巨大で獰猛な恐竜に襲われ、追いかけられながら、ジャングルを大型オフロード車で爆走するハラハラドキドキの極限体験。

【森岡毅の新テーマパーク】ジャングリア沖縄にあって、TDLやUSJにないものとは?画像提供:ジャパンエンターテイメント

HORIZON BALLON(ホライゾン バルーン)
 直径約23メートルの巨大な気球に乗り込んで、標高200メートルの高さからやんばるのジャングルを360度見下ろす贅沢な体験。絶景を眺めながらスパークリングワインも楽しめる。

【森岡毅の新テーマパーク】ジャングリア沖縄にあって、TDLやUSJにないものとは?画像提供:ジャパンエンターテイメント

SKY PHOENIX(スカイ フェニックス)
 約19メートルの高さから、目の前に広がるやんばるの大自然に向かって両手を広げて生身でダイブ! 280メートルにわたって鳥のように沖縄の空を飛ぶ体験で、強烈な爽快感に包まれる。

【森岡毅の新テーマパーク】ジャングリア沖縄にあって、TDLやUSJにないものとは?画像提供:ジャパンエンターテイメント

 これらはほんの一部に過ぎず、全部で22個のアトラクションが用意されている。注目すべきは赤ちゃん恐竜を探す大冒険のFINDING DINOSAURS(ファインディング ダイナソーズ)や、ヤンバルクイナなどやんばるの固有種キャラクターと触れ合うアトラクションなど、小さな子ども連れファミリー向けの体験にも重点を置いていることだ。どれも沖縄の大自然を満喫しながら、スリリングで贅沢な体験ができるものばかりだ。

 さらにはBREEZE ARENA(ブリーズ アリーナ)ではエンターテイメントショーが開催され、夜には沖縄の満点の夜空を花火が彩る。そしてWILD BANQUET(ワイルド バンケット)では沖縄の食材をふんだんに使った料理が提供され、世界最大級のインフィニティ風呂を備えるSPA JUNGLIA(スパ ジャングリア)で大絶景を望みながら温泉につかれば、疲れさえも心地よい思い出になる。

 なんとも豪華で優雅な体験ばかりではないか。7月25日のオープンが待ちきれない。