最近のある夜明け、ロシアのカリーニングラードから約320キロメートル離れたスウェーデンの閑静な島の屋外に10人ほどの米海兵隊員が陣取り、移動式ロケットを発射した。擬製弾はバルト海に着水したが、この演習にはロシアに対するメッセージが込められていた。ドナルド・トランプ米大統領は北大西洋条約機構(NATO)の有効性を疑問視し、NATOを歴史的危機に陥れているが、北欧では米軍が関与を強めている、ということだ。トランプ政権はNATOの「威力」強化を求めている。その実験場となっているのが、NATOがロシアと2方面で対峙(たいじ)する欧州北部だ。トランプ氏がNATOを批判し、国外での軍事的関与を縮小したい意向を公言していることから、欧州政府関係者の間では米国によるNATOへのコミットメントが後退しているとの懸念もある。だが、米軍の司令官らは自分たちの姿勢に変わりはないと話す。