
何百万人もの不法移民の一斉検挙と国外追放は、抗議なしに進められるはずはなかった。しかしドナルド・トランプ米大統領はそれを断行する決意であり、彼が大統領選の選挙運動中にそれを有権者に伝えなかったと言える人は誰もいない。だが、この対立には双方にとってリスクがある。紛争が暴力的な事態に発展し、ホワイトハウスが軍事的対応を取ることになれば、特に米国にとってリスクとなる。
週末にロサンゼルスで起きた衝突は、今後起こり得ることの兆候だ。米移民・税関捜査局(ICE)は、移民が働いていると思われる企業など市内各地を強制捜査し、移民を探している。労働者や労組幹部、移民支援の活動家は街頭に繰り出し、抗議活動を行った。
衝突は一部の場所で激化し、警官に負傷者が出た。ICEと地元警察は、連邦当局者の職務を妨害したとして、有力な労組指導者らを逮捕した。その後トランプ氏は、通常は州の管轄下にある権限を覆すためにほとんど使用されていない法律を発動し、カリフォルニア州兵2000人を派遣した。民主党からは怒りの声、双方から法律違反の非難の声が上がった。
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トランプ氏は、米国で最も緊急の対応を要する移民問題をおおむね解決した。それは、亡命申請によって入国する移民に対して国境を閉鎖することだ。不法入国は4カ月で大幅に減少した。ICEは、危険なギャングメンバーや米国内で犯罪への関与を疑われている者も逮捕した。これに関しては、トランプ氏は国民から圧倒的な支持を得ている。
だが、ホワイトハウスは、スティーブン・ミラー大統領次席補佐官(政策担当)を中心として、不法滞在者全員を強制送還したい意向だ。つまり、不法に入国したが、その後は法を順守して生産的な生活を送ってきた何百万人もの人々がそれに該当する。彼らは家庭を築き、建設、接客、農業、医療など、雇用主が人手不足を訴える数多くの仕事に従事している。