
米 アップル の現状について言えることは、人工知能(AI)分野での出遅れは同社にとって最大の問題ではないということだ。
もっとも、それが今週には最大の問題になるかもしれない。年次開発者会議「WWDC」の開幕を9日に控え、投資家のムードは沈んでいる。アップルの株価は年初から20%下落しており、WWDCを前にこれほど大きく下げたことは少なくとも2010年以降にはなかった。
他の米テクノロジー大手はいまや、 自社の年次開発者イベント を専らAI分野での進展をアピールする機会として活用している。一方アップルは、一世代に一度とされる技術革新でいかに同社が出遅れているかが今回のWWDCで浮き彫りになりそうだ。 昨年のWWDC で発表した生成AI「アップルインテリジェンス」はまだ開発途上にある。また、デジタルアシスタント「Siri(シリ)」は計画中のAI刷新を待つ状態となっている。アップルは3カ月前、予定していたSiriのアップグレードに予想以上に時間がかかっていることを 認めており 、少なくとも今回のWWDCでの発表はないとみられる。
調査会社モフェットネイサンソンのクレイグ・モフェット氏は5日のリポートで、「アップルは過度な約束を避け、本番に向けてまだ準備が整っていない機能の発表を控える」との見通しを示した。
ただ、AIはアップルが直面している重大な問題の一つに過ぎない。関税は同社ハードウエア部門の利益率を脅かしている。ドナルド・トランプ米大統領はアップルに対し、自社製品を米国外で生産するという20年来のビジネスモデルを実質的に見直すよう、公然と圧力をかけている。