
施工不良問題で大打撃を受けた不動産賃貸大手、レオパレス21の2025年3月期の営業利益は08年のリーマンショック以降としては過去最高を記録した。再建の「立役者」ともいえるのが、20年に債務超過に陥った同社を出融資計約570億円で支援した米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループだ。そのフォートレスは足元で出口戦略にかじを切り始めたが、あの手この手で利益を積み上げる貪欲ぶりが目立っている。(ジャーナリスト 千波鴻一)
レオパレス21支援のフォートレス
新株予約権行使で500億円超の利益
ある時は瀕死の企業をバラバラに解体するハゲタカ……。ある時は強きをくじき、弱きを助ける正義の白い騎士……。投資ファンドは都合に合わせて複数の仮面を使い分けている。だが、いずれのケースにせよ、彼ら唯一の行動原理が最大利益の追求に絞られていることはご存じの通りだ。
2020年、アパートの施工不良問題をキッカケに業績が悪化し、債務超過に陥ったサブリース大手、レオパレス21に救いの手を差し伸べたファンドがある。
「砦(とりで)」、「要塞」といった意味を持つ米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループだ。フォートレスは出資と融資で合計572億円を拠出し、債務超過の解消に寄与したのだ。
フォートレスはその後、ゴルフ場大手のアコーディア・ゴルフや、熱海の老舗ホテル、ホテルアカオを買収し、さらにセブン&アイ・ホールディングスの傘下だった百貨店、そごう・西武の買収で話題をさらったが、レオパレス21への金融支援から間もなく5年が経過しようというこの時期、いよいよ“ぬれ手で粟(あわ)”の出口戦略に取り掛かっている。すでに“虎の子”の新株予約権を行使し、その株を全てレオパレス21に買い取らせることになったのだ。
不動産業界に詳しいジャーナリストが説明する。
「5月27日にレオパレス21が発表したリリースによれば、新株予約権を行使してフォートレスが手に入れるレオパレス21株などをレオパレス21が816億円で買い取ると合意しています。元値は302億円だったので、これだけで500億円以上の利益。けれど、フォートレスのもうけはこれだけではありません。5年前に142円で買った現物株8450万株がそのまま残っていて、こちらを売却しなければ今後も筆頭株主であり続ける。この現物株は購入時よりも500円以上値上がりしていますから、ざっと計算して420億円の含み益があります」
次ページでは、両者による買取価格の交渉の際に起きた、フォートレスに追い風となった出来事や、交渉の顛末を明らかにする。また、レオパレス21の取引先の未上場ベンチャーをも巻き込んだフォートレスの貪欲な出口戦略について詳報していく。