ベイカレント 爆速成長の罠Photo:Kinga Krzeminska/gettyimages

国内発のコンサルティングファーム、ベイカレントは急速な台頭を遂げてきた。足元で人員数は5000人を突破し、コンサルビッグ4超えも果たした。だが、あまりに急激な成長は組織や社内風土のひずみも顕在化させつつある。爆速成長の陰でベイカレントがはまった罠(わな)とは。長期連載『コンサル大解剖』内の特集『ベイカレント 爆速成長の罠』では、複数回にわたり、ベールに包まれてきたベイカレントの実像を浮き彫りにする。第4回の本稿では、ベイカレントの最高幹部の顔触れと序列を明らかにしていく。幹部の序列はその独特な組織体制とも密接で、実は、会長や社長よりも格上の「陰の最高権力者」が社内に存在する。その正体とは。爆速成長するコンサルファームがいびつな権力構造を持つに至った背景もひもといていく。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

ベイカレントで北風新体制が始動も
「会長と社長はしょせん『お飾り』」

 5月27日に東京都内で開かれたベイカレントの定時株主総会で、6人の取締役と監査等委員である4人の取締役の選任議案が可決された。賛成比率はいずれも9割を超えた。本特集#1『ベイカレント新社長の経歴に漂う“謎”とは?外資系IT、外資戦略系…“超華麗キャリア”の実相』で不可解な経歴が指摘された、新社長の北風大輔氏の賛成比率は95.31%だった。株主総会後の取締役会を経て、北風新体制が発足した。

 企業にとってトップ交代は大きな意味を持つ。世代交代の側面だけでなく、部門ごとのパワーバランスなどに大きな変化をもたらすことも少なくない。さらに、経営路線の大きな転換を伴うこともある。ところが、今回のトップ人事で、ベイカレント社内の権力構造に変化が起きることはない。どういうことか。

 実は、ベイカレントには、会長や社長より格上の「陰の最高権力者」が存在する。それは、すでに全役職から退いている創業者ではない。その人物は、会長に就いた阿部義之氏や北風氏をしのぐ圧倒的なパワーを持ち、阿部氏が社長を務めてきた8年の間も実質的に全権を掌握してきた。あるベイカレントOBは「阿部氏や北風氏はしょせんお飾りにすぎない」と打ち明ける。北風氏がトップに就いても権力構造が変わらないのはそのためだ。

 では、その人物とは一体何者なのか。次ページでは、複数のベイカレント関係者への取材を基に、最高幹部の顔触れや経歴に加え、職位とは異なる“真の序列”を明らかにする。ベイカレントの権力構造や意思決定プロセスは他のコンサルファームはもちろん、上場する大手企業としてもあり得ないほどいびつなものとなっている。同社に独特な統治構造がもたらされた背景についても解説していく。