「もしも周りの者が皆、正気を失い、自分のことを責め立てているときに冷静でいられるなら(後略)」。このラドヤード・キプリングの詩「If(もしも)」の一節が筆者の頭の中に響き渡ったのは、激しいが冷静で落ち着いているように見えるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と6月8日にエルサレムの彼のオフィスで面会し、オフレコの会話をしたときのことだった。当時、イランに対するイスラエルの最近の攻撃はまだ始まっておらず、ビビ(友人も敵も同じようにイスラエル史上最も在任期間の長い首相をこう呼ぶ)が進退窮まっているというのが世間一般の見方だった。ネタニヤフ首相とドナルド・トランプ米大統領が不仲だという報道がニュースをにぎわせていた。トランプ氏は最近の中東歴訪の際にイスラエルを訪れなかったと、ネタニヤフ氏に批判的な人々は指摘した。また、ペルシャ湾岸諸国が米国と取引をまとめる一方、ネタニヤフ氏率いるイスラエルは蚊帳の外に置かれた。