【社説】トランプ氏はイラン問題で抑止力を取り戻すべきPhoto:NurPhoto/gettyimages

 ジョー・バイデン氏の米大統領としての地位は、アフガニスタンをイスラム主義組織タリバンに委ねた日から衰退し始めた。米国の抑止力は崩壊し、その敵対勢力にウクライナと中東で攻撃を仕掛ける好機をもたらした。ドナルド・トランプ大統領が今、イランの核開発計画を破壊しようとするイスラエルの取り組みを支援すれば、バイデン氏のアフガニスタン問題を巡る負の遺産を覆し、抑止力を取り戻せる機会を得ることになる。

 米大統領がイラン核施設への空爆でイスラエルを支援すべきかどうかを検討する中で、こうした点が戦略上重要な意味を持つ。戦争に敗れつつある中でも核計画の中止に抵抗しているイラン指導部は、トランプ氏がさらなる時間稼ぎの外交でイランに救いの手を差し伸べることを期待している。

 しかしトランプ氏が何度も指摘しているように、イランが核開発計画の断念に同意すれば、イスラエルの攻撃を終わらせることができる。国際的な監視の下でウラン濃縮能力を放棄し、遠心分離機を破壊し、将来の核査察を妨げないことが必要となる。イランは核兵器以外の軍事力の大部分と最高司令官を失う危険を冒してまで、これらの条件受け入れを拒否している。このことは、同国が和平よりも核兵器保有を望んでいることを示すものだ。

 世界が、特にロシアと中国の強硬派が、トランプ氏の出方を注視している。トランプ氏は、親密な同盟国が平和への世界的な脅威を排除し、枢軸国の一つを弱体化させるのを助けるのか。それとも、核武装した過激派政権の存在よりもあらゆる武力行使を恐れる国内左右両派の融和派の声に耳を傾けるのか。

 イスラエルはうまくやっているのだから、米国がこの争いに加わる必要はないとの意見もある。だが、イスラエルに能力と創造性があるにしても、イランの核施設全てを上空から破壊する爆撃力はない。国際原子力機関(IAEA)は、イスラエルがイラン中部ナタンズの地下にあるウラン濃縮施設に深刻な損傷を与えたとの見方を明らかにした。それでもまだ、同国山岳地帯のフォルドゥの地下深くにある濃縮施設が残っている。フォルドゥの濃縮施設を破壊するには、米国の地中貫通爆弾とそれらを運ぶ爆撃機が必要だ。