
アジア新興国、輸出主導の成長に暗雲
中国は大幅引き下げ合意、鍵握る見直し交渉
トランプ政権が打ち出した鉄鋼・アルミニウム、自動車への25%関税や「相互関税」は、国際貿易の混乱や各国景気の減速懸念などで、世界経済の不透明感を一気に強めることになった。
とりわけ、すべての国に一律で10%、日本など約60カ国・地域に対して非関税障壁に応じて税率を上乗せする相互関税は、大きな懸念を呼び、その後の国際金融市場で米国の国債や株式、ドルが売られる「トリプル安」に陥り、トランプ政権は、上乗せ関税の発動から半日後には90日間の停止を余儀なくされた。
報復措置を含めて、異常な高関税をかけ合うことになった中国との間でも5月12日には、双方が115%ずつを引き下げる合意(一部は暫定措置)が発表された。
トランプ政権が当初から関税政策を軟化させているなかで、今後、各国との間の関税見直し交渉がどこまで進むかが、世界経済や各国経済の行方のポイントになる。
とりわけ注目されるのは、米国とも中国とも緊密な貿易関係を維持し、輸出主導で世界の成長セクターとなってきたアジアの新興国だ。
だが現状では、関税引き下げの合意で当面は影響の緩和が期待される中国と、ASEAN諸国などとの間には濃淡がある。各国の関税見直し交渉や経済がどうなるかによっても世界経済の行方は変わってきそうだ。