糖尿病薬でアンチエイジング、「長寿に効く?」一部の「バイオハッカー」たちは糖尿病治療薬を長寿の薬として扱っている Illustration: Steph Aaronson/WSJ, Daisy Korpics/WSJ, Pixelsquid (2)

 健康にこだわる一部の米国人は、次に注目すべき抗加齢薬が既に存在しており、数百万人に上る糖尿病患者の薬棚の中にあると考えている。

 ジャディアンスやフォシーガなどの商品名で販売され、広く使用されているSGLT2阻害剤は、10年以上も前から2型糖尿病の治療薬として流通している。心不全や腎臓病のような疾患の治療薬としても規制当局から承認されている。

 しかし最近は長生きに関心のある人向けの人気の健康ポッドキャスト番組やオンライン掲示板「レディット」のフォーラムに注目の話題として取り上げられるようになった。こうした人々――多くが糖尿病などの適用対象となる疾患にかかっていない――にとって、SGLT2阻害剤は健康で長生き、つまり健康寿命の延伸に役立つこと願って実践する「ハック」の一つになりつつある。

 SGLT2阻害剤は腎臓の機能を助け、尿を通じて体内から余分なブドウ糖を排出させ、血糖値を改善することで効果を発揮する。この薬が健康な人間の寿命を延ばすかどうかについての研究はないが、加齢に伴う複数の疾患の予防や、特定の慢性疾患のある患者の死亡率の低下に役立つことを示すエビデンスが相次いで報告されている。研究者の中には、この薬が加齢の基礎生物学にも影響を与える可能性があると考える人もいる。

「これはわれわれの時代の薬だ」。ベイラー大学医療センターの心不全・移植部門の医師で、SGLT2阻害剤を研究するティモシー・ゴング氏はそう話した。「心臓や腎臓、内分泌などの専門医、一般開業医さえ非常に興奮している」