そこにあったのは、金色の箱だった。深夜便の機内の幼児よりもうるさく、熱波の中のキャンプファイヤーよりも熱く、カリブ海のプライベートな島よりも高価なものだ。そう、それは実際に稼働している米半導体大手エヌビディアの画像処理半導体(GPU)だ。筆者は「見るだけで触るな」という厳しい指示を受けていた。まるで筆者が金属製の網目状の筐体(きょうたい)をなめるとでも言うように。そこに立っているだけで、電力がむさぼり食われる音と感覚が伝わってきた。人工知能(AI)の飽くなきエネルギー需要については誰もが耳にしている。米エネルギー省とローレンス・バークレー国立研究所の報告書によると、バージニア州アシュバーンで筆者が訪れたようなデータセンターは、2028年までに米国の総電力消費量の最大12%を占める可能性がある。