株式投資の世界で、いま注目を集めている一冊がある。楽天証券の窪田真之氏が手がけた『株トレ──世界一楽しい「一問一答」株の教科書』だ。全60問のクイズに答えていくだけで、実践で使える売買判断の感覚が自然と身につく構成が、幅広い個人投資家の支持を集めている。本稿では、『株トレ』の担当編集者が、特にこれから投資を学ぶ人に届けたい「プロの視点」を紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

人気の成長株で「大損」する人の共通点
「この株は必ず伸びる!」「私、3倍になりました!」――そんな「成功者の声」に惹かれて株を買った経験はないだろうか?
次の図は、『株トレ』で紹介されている、小型成長株の典型的な株価変動パターンだ。

窪田氏によれば、黎明期に安値で仕込み、長期保有すれば10倍にもなる「夢のような成長株」であっても、タイミングを間違えれば、簡単に半値になることもある。
特に、「この株は素晴らしい」と話題となっている銘柄は、すでに株価がファンダメンタルズからかけ離れて高騰していることも多い。
そういった急激に上昇した株は、そのぶん下落のリスクも大きい。
なぜ人は「高値づかみ」を繰り返すのか?
このような失敗を避けるためには、チャートを見て冷静に売買判断をすることが重要だろう。
だが、なぜ多くの人がチャートを無視し、高値づかみを繰り返してしまうのか?
窪田氏は、次の2点を指摘している。
① 他人の推奨を鵜呑みにし、自分で判断しない
② 都合の悪い情報から目を背けてしまう
当たり前の話だが、ウェブやSNSで推奨されている銘柄であっても、最終的に買うのも売るのも自分だ。他人が売買の責任をとってくれるわけではない。
さらに、私たちは「都合のよい情報」だけを信じてしまう傾向がある。
株価が急騰して話題になった銘柄には、「この企業は将来性がある」「これからもっと伸びる」といったポジティブな情報があふれる。
そのため、たとえ株価が下がり始めても、「この銘柄は間違いない」と思い込み、ナンピン買いしてしまう人も少なくない。
「下がっているから一度売ろう」と冷静に判断し、すばやく行動するのは、実は簡単ではないのだ。
チャートを読む力こそ、個人投資家の武器になる
どれだけ人の意見を聞いても、実際に売買を決めるのは自分。だからこそ大切なのは、「自分で判断する力」だ。
とはいえ、その力を伸ばすのは簡単ではない。
その力を養うために作られたのが、『株トレ』である。
この本では、チャートを見ながら「買いか? 売りか? 様子見か?」を繰り返し判断していく。徹底的に実践を意識した構成が本書の最大の特徴だ。
結局、売買の最終判断を下すのは自分。他人に頼るのではなく、自分の目でチャートを読み、自分の意思で銘柄を選べる投資家になりたい。
知識を頭に入れるだけでなく、体に染み込ませることで、どんな相場でも冷静に対応できる判断力が身につくのだ。