
相続は家族にとって一大イベントだが、頻繁に発生するものではない。それゆえに、遠い記憶を頼りにイメージしていると痛い目に遭うかもしれない。自分の親が資産を引き継いだときの相続と、あなたが資産を引き継ぐことになる“これからの相続”は状況が全く違う。「相続税なんて関係ない」と思っていた家庭でも、数千万円の税金を払わなくてはならない事態が起こり得る。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭)
相続税は自然増税の時代へ
一族を襲う“トリプルパンチ”の正体
「10年前、父の相続が発生したときには、相続税を払わずに済んだんですよね。だから母が亡くなった今回も、関係ないでしょって思っていたのですが……」
昨今、こんな嘆きの声を耳にすることが少なくありません。
現在、相続税はインフレ&少子化による「自然増税の時代」に突入していることを、あなたは理解しているでしょうか?
その背景には、次の3つの変化があります。
相続税“爆上がり”のトリプルパンチ
(1)基礎控除の縮小
今から10年前、2015年施行の税制改正によって、相続税の基礎控除は縮小されました。
「5000万円+法定相続人×1000万円」から、「3000万円+法定相続人×600万円」へと大幅に引き下げられたのです。
基礎控除は簡単に言えば、「相続税を払うか払わないかの遺産のボーダ-ライン」のこと。
例えば、母親が亡くなって相続人が子ども2人の場合、2015年以前は基礎控除が7000万円(5000万円+2人×1000万円)となり、亡くなった母の遺産が7000万円以下なら相続税は非課税でした。