人工知能(AI)によって廃れる仕事は増えるばかりだ。シリコンバレーはいかなる解決策を講じるのか。それは、働かなくても給料をもらえる仕組みだ。イーロン・マスク氏やサム・アルトマン氏などの米テクノロジー界の大物は、AIが潤沢な富を生み出す未来を描いている。一部の重鎮は10年前から「ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)」と呼ばれる無条件の現金給付制度を支持している。エコノミストや福祉権活動家は1960年代、貧困対策としてUBIを提唱し始めた。同じ頃、大型汎用(はんよう)コンピューターがオフィスに登場し、雇用喪失への懸念が高まる中、UBIは人間の仕事をテクノロジーが奪う問題の解決策になり得るのではないかと考えられた。ジョージタウン大学カタール校のカール・ワイダークイスト教授(哲学)はそう説明する。