新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の際に見られたように、研究施設で行われている実験内容が外に漏れて広まると、甚大な被害を生じさせることがある。そしてそれは簡単には元に戻せない。これと同様に2008年の金融危機以降に打ち出された「異例」の金融政策ツールは、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策体制を変容させ、予測不能な状況をつくり出している。FRBの新たな運営モデルは事実上、「機能獲得型」金融政策の実験と呼ぶことができる。標準的ではない政策を過剰に使用することやその使命の拡大、さらに組織の肥大化は、中央銀行としての独立性を脅かしている。FRBは方向転換を図らなければならない。現在標準となっているツールキットは管理できないほど複雑化し、その理論的な支えも不確実だ。シンプルで測定可能なツールを用い、狭い範囲の使命に焦点を当てることがより良い成果をもたらし、長期的には中央銀行の独立性を守る最も明確な方法だろう。