テクノアルファ社長 松村勝正(撮影:相川大助) |
タイミングは最悪だった――。2007年夏、米国でいわゆるサブプライムローン問題が火を噴き始めた影響を受け、新興市場は冷え込んでいた。
新規上場は激減。8月末に上場した企業から六銘柄連続で、初値が公募価格を割り込むような悲惨な状況だった。
そうしたさなかの10月10日、松村勝正が興したテクノアルファは大証ヘラクレス市場に上場した。証券会社との交渉が長引き、すでに一年あまり上場を延期していたこともあり、「環境が悪くてもこれ以上は延ばせない」。公募価格は12万円。松村は公募割れも仕方がないと、半ば諦めて上場日を迎えた。
ところがである。予想に反し初値は24万円を付ける。以降、4日連続でストップ高まで買われ、あっという間に株価は65万円に達した。
上場承認段階で会社が発表した想定価格に比べ公募価格が低く、割安感があったのも事実。しかし、「これほど評価していただけるとは」と松村は喜びの声を上げた。
テクノアルファは、技術専門商社。半導体製造装置や電子材料のほか、船舶や環境機器などの商品を欧米から輸入。納入先であるメーカーのニーズに応じて加工し、販売している。
特に、自動車や冷蔵庫、身近なところでいえば大型テレビなど家電の電源アダプターに至るまで、幅広く使われているパワー半導体を製造する装置、「ワイヤボンダ」が主力商品。いまや国内シェアのじつに4割を占めるほどに成長している。
新聞社、英商社と渡り歩いてたどり着いた
技術専門商社への道
工業高校を卒業後、大学でも工学部に進むなど一貫して理科系の道を歩んできた松村だが、社会人のスタートは意外にも新聞社だった。