清涼飲料市場で最大のカテゴリーでもある缶コーヒー。成熟市場での激しいつばぜり合いに、コンビニのカウンターコーヒーという新たなライバルが加わった。“夏のコーヒー戦争”が幕を開ける。
毎年市場が少しずつ縮小する飲料業界。そこにわずか半年足らずで5000万杯を売ったヒット商品が現れた。セブン-イレブン・ジャパンがコンビニの店頭で売るカウンターコーヒー「セブンカフェ」だ。1杯ずつコーヒーをひき抽出する方式の機械を自社開発し、喫茶店並みの品質のコーヒーが1杯100円から買えることもあり、売れている。8月末には全店に設置を完了し、年間で3億杯の販売を見込む。
コンビニにとってもともと店内調理品は利益商材だが、中でもカウンターコーヒーは「通常客数が減るアイドルタイムにも販売が途切れない。来店客数の増加や、菓子やデザートなどのついで買い需要にもつながっている」(和瀬田純子・セブン-イレブン・ジャパンFF・デイリー部FF・惣菜シニアマーチャンダイザー)。セブンと並び他のほぼすべてのコンビニチェーンがこぞってカウンターコーヒーを投入。ちょっとしたブームとなっている。
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この動きをかたずをのんで見守っているのが缶コーヒーメーカーだ。「店頭で各社のカウンターコーヒーを大量に買って味を研究しているが、想像以上に本格的で驚いた」とある大手メーカー担当者は言う。コンビニは、自販機に次いで大きな缶コーヒーの販売チャネルで、特に新商品の露出にとって重要な場だ。その得意先の販売力を熟知しているだけに、新たなライバルが気になってしょうがないのだ。各社とも「缶コーヒーとカウンターコーヒーは違う商品で、現状では影響はない」としているものの、カウンターコーヒーが広がり始めた今年1月から3月にかけ、缶コーヒーの売り上げは前年比4%減った(市場全体。飲料総研調べ)。
今後、缶コーヒーよりも低価格で常時レギュラーコーヒーが売られれば、これまで上客だった男性サラリーマンが流れる可能性は大きい。
缶コーヒーは現在、清涼飲料市場の中で約25%を占める最大のカテゴリーの一つだ。だが、その市場の規模はこの20年余り、ほとんど変動してこなかった。缶コーヒーの顧客の8割は「働く男性」で、必要なエネルギーの補給や覚醒目的で飲まれるもの。緑茶などの他の清涼飲料カテゴリーと比べ、価格競争はそこまで激しくないが「基本は他社のシェアをいかに奪うかのバトル」(柳井慎一郎・サントリー食品インターナショナルブランド戦略部長)が繰り広げられてきた。