大谷翔平Photo:Arlyn McAdorey/gettyimages

 2年前、ロサンゼルス・ドジャースは数週間で10億ドル(約1520億円)以上をつぎ込み、大谷翔平および山本由伸と契約した。同じ頃、ミルウォーキー・ブルワーズもそれに対抗するかのように補強を行ったが、ほとんど注目されなかった。

 ブルワーズが獲得したのは、メジャーリーグの複数のチームを渡り歩いたエリック・ハースで、契約金は100万ドルだった。

 当時、ブルワーズの監督として雇われたばかりだったパット・マーフィー氏はこの差を理解していた。そこでマーフィー氏はドジャース編成本部長のアンドリュー・フリードマン氏にからかうようなメッセージを送った。

「おめでとう。君のスカウト部門と選手育成部門はあらゆる手を尽くして選手を見つけたね」。マーフィー氏はそうつづった。「同じ日にわれわれが控えの捕手と契約したせいで、君たちの注目を奪ってしまい申し訳ない」

 マーフィー氏は当時、このメッセージがこれほど正しく未来を言い当てることになると自覚していたはずがない。マーフィー氏はもう笑っていられない。

 ドジャースは誰にとっても笑いごとではない。

 メジャーリーグの頂点を決めるワールドシリーズの開幕を24日に控え、残る唯一の疑問は、ドジャースを倒せるチームはあるのかということだ。これはこの競技においてシーズン開幕日に最も重要な疑問だった。そして7カ月たった今も最も切実な問いであり続けている。

 3億5000万ドル超という過去最高の年俸総額を誇るドジャースは、大勢の高給取りのスター選手でライバルをねじ伏せ、ポストシーズンで圧倒的な成績を収めている。ポストシーズンのトーナメントは混とんとしていて予測できないことで知られるが、ドジャースはこれまで10試合で9勝を挙げ、どこから見ても期待通り、向かうところ敵なしのようだ。