石油精製販売を主力に、天然ガス、電力など複数のエネルギー事業と金属事業を展開する10兆円企業は、巨艦をどう成長させていくのか。大型合併によって誕生した世界に例がない総合エネルギー企業の今を追った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

「レギュラー139円」を掲げるノンブランド(非元売り系列)のガソリンスタンド(GS)。その近所に「レギュラー147円」を掲げる国内最大手「ENEOS」特約店系列のGSがある。ドライバーたちは「安いから」と、ノンブランドGSへと吸い寄せられていく。こんな光景は今、全国各地で日常茶飯事となっている。原因はガソリン流通の構造不況にある。

 ガソリンが供給過剰状態にあり、石油元売り各社は系列GSへ卸すだけではガソリンが余る。販売量を落としたくないため、余剰分をより安価な卸値でスポット市場へと流す。そこから調達するノンブランドGSは、系列GSよりも安値で販売できるというわけだ。

 この影響で系列GSが淘汰されることは、結果的に、元売り各社にとっては不採算なGS網のリストラにつながる。ENEOS約1万1000店を束ねるJXホールディングスにおいても、それは例外ではない。

 JXは石油精製販売を主力に、天然ガス、電力、新エネルギー、石炭など複数のエネルギー事業を展開する売上高10兆円企業だ。事業規模は大小かなりの開きがあるものの、1次エネルギーをほぼすべて手がけ、かつ川下も手がけて最終ユーザーに供給する自らを「エネルギー変換企業」と銘打ち、「巨大なエネルギー帝国を築く」というビジョンを持つ。